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撫子
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30代後半の主婦。
高校生の頃から源氏物語に興味を持ち始めました。大学では源氏物語を研究し、日本語日本文学科を首席卒業しました。
30代になり、源氏物語を改めて学びなおしています。
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【源氏物語】中の君ってどんな人?性格や容姿、匂宮との結婚生活までわかりやすく解説!大君・浮舟との違いとは。

宇治の中の君ってどんな人?性格や容姿、匂宮との結婚生活までわかりやすく解説!大君・浮舟との違いとは。

源氏物語 初心者
『源氏物語』に出てくる中なかの君きみってどんな人なの?詳しく教えて!


『源氏物語』の宇治十帖には
3人のヒロインが登場しますが、
宇治の中の君は、その3人のうちの一人です。

宇治十帖のヒロイン三人

大君・中の君・浮舟

姉の大君は
薫との結婚を拒んだまま衰弱死、
異母妹の浮舟は
2人の貴公子の板挟みに悩み、
宇治川に入水した後、助けられ出家します。

中の君は、3人のヒロインのうちで唯一、
「世の常の女」として結婚し、子を産み、
夫の浮気などに悩みながらも
一般的な幸福を得て、
俗世間を生きていく人物です。

この記事でわかること

★中の君について★
相関図、性格、容姿、年齢、身分
などを詳しく解説しています。

その他、
・大君、浮舟との違い
・匂宮との結婚生活の実態
・中の君が浮舟を薫に紹介した理由
・人生年表
についても記載しています。

下記の目次をタップして、
読みたいところからお読みください😊

目次

中の君ってどんな人?性格や容姿を解説

ここでは、宇治の中の君の

  • 相関図
  • 性格
  • 容姿
  • 年齢
  • 身分

について詳しく解説していきます。

まずは相関図と周辺の人間関係から説明していきますね!

中の君の相関図と人間関係

こちらは、中の君の周辺に
クローズアップした人物相関図です。

【源氏物語】宇治の中の君周辺の相関図
中の君周辺の相関図

※薫は、女三の宮と光源氏の子となっていますが、
 本当は女三の宮が柏木と密通して生まれた子どもです。


『源氏物語』第三部全体の相関図は、
こちらです。

『源氏物語』第三部の相関図
※タップして拡大します

中の君に関わる主要な登場人物について
簡単に紹介します。

中なかの君きみ:
宇治八の宮の二女。大君の妹。
愛敬があり可愛らしい美女。
匂宮と結婚するが、
夜がれに悩む。
後に京に引き取られ、
男子を出産する。

大君亡き後、薫は中君を
恋い慕うが、中の君は
薫の思いを迷惑に思い、
大君そっくりの浮舟の存在を
薫に教える。

大君おおいぎみ:
宇治八の宮の長女。
中の君の姉。
気高く上品な女性。
薫の求愛を拒否したまま
病によりこの世を去る。

浮舟うきふね:
宇治八の宮の三女。
大君、中の君の異母妹。
大君と顔がそっくり。
薫と匂宮の三角関係に悩み、
宇治川に入水する。

匂宮におうのみや:
光源氏の孫であり、
明石の姫君と今上帝の皇子。
宇治の中君と結婚した後、
夕霧の娘・六の君を正妻とする。
中の君との間に一児をもうける。
後に浮舟と男女の関係を結び、
友人の薫と三角関係になる。

薫かおる:
表向きは光源氏と女三の宮の子だが、
本当は柏木と女三の宮が
密通して生まれた子。
宇治の大君を亡くした後、
妹中の君に執心する。
やがて、浮舟を愛人とし、
匂宮と争う展開に。

宇治八の宮:
桐壺院の第八皇子であり、
光源氏の弟。
大君、中の君、浮舟の父親。

亡き北の方:
昔の大臣の娘。
中の君を出産した後に、
産後の肥立ちが悪く死去。

六の君:
夕霧の娘。
匂宮の正妻となる。

<解説>
宇治の大君、中の君は
気品あふれる美人姉妹でした。

中の君は情熱的で多情な匂宮から
求愛されますが、
姉の大君は穏やかな印象の薫と
中の君を結婚させたいと望んでいました。
ところが、薫は大君に片思いをしており、
中の君との結婚には前向きではありません。
薫のお膳立てにより、
匂宮は強引に中の君と結婚してしまいます。


その後、匂宮は母中宮に諫められ、
遊び歩きを禁じられたため
自由に宇治に通えなくなってしまい、
中の君に逢えない日々が続きます。

中の君も姉の大君も
匂宮の夜離れを悲しむとともに、
大きな屈辱を感じます。
間もなく大君は病死。
匂宮の中の君への愛情は薄れることなく、
ついに中の君は京の二条院に引き取られます。


京に引き取られてからも、
匂宮と六の君の結婚や
匂宮と浮舟の浮気など、
中の君の心は休まる暇がありませんでしたが、
匂宮にとって中の君は特別な存在であり、
中の君は男子を出産しています。

筆者
中の君についての理解を深めるポイントは、「世の常の女」として賢く生き抜き、成長していくところです。


中の君は、当初は姉大君と同様に
生涯独身で通そうと思っていたけれど、
匂宮との思いがけない結婚により
「世の常の女」(普通の女は男の妻になる)
としての立場に収まり、
姉の死や薫からの執着、夫の浮気などの
試練を乗り越えて
皇族の妻としてしたたかに成長していきます。

姉の大君や異母妹の浮舟が、
この世を憂きものと悲観して、
普通の女のように結婚したり
妾になったりして
生きていくことを放棄したのに対し、
中の君は、試練や悲しみを受け入れて
上手に世渡りしていくことを
選んだのです。

中の君の性格

大君も中の君も、
どちらも上品で優雅な女性ですが、
中の君には以下のような性格的特徴があります。

  • 大君より子どもっぽく世間知らず
  • 明るくて可愛らしい
  • 姉思いで愛情深い
  • したたかで賢い一面も

原文を引用しつつ、具体的に中の君の性格を
説明していきます。

大君より子どもっぽく世間知らず

姉の大君は思慮深く頭の良い女性ですが、
中の君はおっとりとしていて、
子どもっぽく、間知らずな傾向があります。

【原文】
同
おな
じ心
こころ
に何
なに
ごとも語
かた
らひきこえたまふ中
なか
の宮
みや
は、かかる筋
すぢ
には、今
いま
すこし心
こころ
も得
え
ずおほどかにて、何
なに
とも聞
き
き入
い
れたまはねば、

【現代語訳】
同じ気持ちで何事もお話し合いになる中の君は、このような結婚の話題については、(大君に比べて)もう少しご存知なくおっとりして、何ともお分かりでないので、

『源氏物語』「総角」巻より引用

周囲の女房は、
大君と薫の結婚を望んでいましたが、
大君は自分は生涯独身で、
中の君と薫を結婚させたいと思い
悩んでいました。

しかし、中の君は鈍感で
世間知らずなので、女房の企みや
大君の煩悶にも気づかず
結婚のことはあまり深く考えていませんでした。

薫も、中の君の性格について、
「少し子どもっぽくて、
親しみ深く潤いのある人柄という点で
大君より劣っている」

と評しています。

明るくて可愛らしい

中の君は、たいへん可愛らしい性格でした。
匂宮は、以下のように中の君の性格を評価しています。

【原文】
ただ、やはらかに愛敬
あいぎゃう
づきらうたきことぞ、かの対
たい
の御方
おほんかた
はまづ思
おも
ほし出
い
でられける。

【現代語訳】
ただ、もの柔らかで愛敬があってかわいらしい点では、あの対の御方(中の君)が一番にお心に浮かぶのであった。

『源氏物語』「宿木」巻より引用

薫との浮気を匂宮に疑われた時にも、
中の君は恨めしく思う気持ちを隠して
几帳の陰から顔を出して和歌を詠んだり、
琴をひいたりしています。

いつまでも根に持ったり、意地を張ったり
することなく、匂宮とコミュニケーションを
とろうとする素直なところが可愛いらしいですね。

姉思いで愛情深い

宇治の姉妹は強い家族愛で結ばれていました。
中の君は、優しい姉を幼い頃から信頼し、
慕っていたのです。

次の引用は、
中の君が匂宮と結婚した後のことです。
突然の結婚となり、姉妹ともに
ショックを受けています。

中の君は、大君に迷惑をかけるのが
辛いと悩んでいます。

【原文】
と、御髪
みぐし
をなでつくろひつつ聞
き
こえたまへば、いらへもしたまはねど、さすがに、かく思
おぼ
しのたまふが、げに、うしろめたく悪
あ
しかれとも思
おぼ
しおきてじを、人笑
ひとわら
へに見苦
みぐる
しきこと添
そ
ひて、見扱
みあつか
はれたてまつらむがいみじさを、よろづに思
おも
ひゐたまへり。

【現代語訳】
と、(大君は、自分は何も知らなかったのだと、中の君の)御髪を撫でつくろいながら申し上げなさると、(中の君は)お返事もなさらない。しかし、そうはいっても、(大君が)このようにおっしゃることが、なるほど、不幸な道を勧めようとしたわけではあるまいから、(今回このような結婚をすることになり)、世間から笑われて見苦しいことが加わって、(大君に)お世話を焼かせ申すのは辛いと、(中の君は)いろいろと考えていらっしゃった。

『源氏物語』「総角」巻より引用

この他にも、
父八の宮、大君が亡くなった時に
中の君が深く悲しんでいる描写からも、
その愛情深さがよくわかります。

したたかで賢い一面も

匂宮との結婚前は
世間知らずな印象の強い中の君ですが、
結婚後、特に京に移ってからは
精神的に成長し、
したたかで賢い女性になっていきます。


匂宮が六の君と結婚した際、
中の君は宇治に帰ってひきこもりたいと
薫に相談しますが、
その薫に下心があることを知ります。
相談相手を失った中の君は、
「死ぬまでの間は、生きているのにまかせて、
おおらかにしていよう」
と匂宮の妻としてしたたかに
生きることを決心するのでした。


薫に浮舟の存在を教えて、
自分から興味を移そうと考えたのも
賢い判断と言えるでしょう。

中の君の性格まとめ

結婚前は世間知らずで子どもっぽい性格だったが、結婚後、苦労を重ねるにつれて賢さと強かさを身につけた。素直で可愛らしく愛嬌にあふれ、才気があって明るい雰囲気が魅力的。父八の宮、姉大君への愛情が深い。

中の君の容姿

中の君は、女ざかりで華やかな美人でした。
最高の貴女である女一の宮(匂宮の姉)、
そして冷泉院の女一の宮
にも劣らないほどの容貌の持ち主です。

「ゆゆしきまでものしたまひける」
(不吉なまでに美しくいらっしゃる)

「世の物思ひ忘るる心地して」
(この世の憂いを忘れるほどの美しさ)

「よろづの罪許しつべくをかし」
(全ての罪を許したくなるような美しさ)

というような描写から、絶世の美女が想像されます。

中の君の容貌が描写された原文を一つ引用してみます。

【原文】
濃
こ
き鈍色
にびいろ
の単衣
ひとへ
に、萱草
かんぞう
の袴
はかま
もてはやしたる、なかなかさま変
か
はりてはなやかなりと見
み
ゆるは、着
き
なしたまへる人
ひと
からなめり。帯おびはかなげにしなして、数珠ずずひき隠かくして持もたまへり。
いとそびやかに、様体やうだいをかしげなる人ひとの、髪かみ、袿うちきにすこし足たらぬほどならむと見みえて、末すゑまで塵ちりのまよひなく、つやつやとこちたう、うつくしげなり。かたはらめなど、あならうたげと見みえて、匂にほひやかに、やはらかにおほどきたるけはひ、女一をんないちの宮みやも、かうざまにぞおはすべきと、ほの見みたてまつりしも思おもひ比くらべられて、うち嘆なげかる。

【現代語訳】
濃い灰色の単衣に、橙色の袴の鮮やかな色を身につけているのが、かえって様子が違って華やかに見えるのは、着ていらっしゃる人のせいのようである。帯を形ばかりに結んで、数珠を隠して持っていらっしゃった。とてもすらりとした、姿の美しい人で、髪が袿に少し足りないぐらいに見えて、裾のほうまで微塵も乱れがなく、つやつやと毛量がたくさんあって、いかにも可愛らしい感じである。横顔などは、実に可憐に見えて、色つやがよく、やわらかみがあっておっとりした雰囲気は、女一の宮も、このような様子でいらっしゃるだろうと、ちらっと拝見した時のことが思い比べられて、(薫は)溜め息をもらされる。

『源氏物語』「椎本」巻より引用

中の君は、「うつくし」「らうたし」「愛敬づき」
などの表現で描写されることが多いです。
それぞれ微妙な意味の違いはありますが、
どれも「可愛らしい」というような意味です。

中の君は可愛らしい美しさを持った女性でした。

もともとは、まるまると太っていましたが、
匂宮との結婚、姉大君の死などの苦労を
経験して、「早蕨」巻以降は少し痩せてしまっています。

中の君と大君、浮舟の違い

<大君と中の君の違い>
2人とも品のある美しさを持った女性で、
似ていますが、
大君のほうが優雅さや奥ゆかしさが
優っていました。
中の君は、可愛らしい雰囲気が
優っていました。


大君と浮舟は父八の宮に
似ているのに対し、
中の君は母親に似ているので、
三姉妹の中で中の君だけ少し
雰囲気が違うのです。

しかし、苦労を重ね痩せてしまってからは
中の君にも落ち着きが加わり、
薫は大君と中の君がとても良く
似ていると感じています。

<中の君と浮舟の違い>
匂宮は、中の君のほうが浮舟よりも品があって、
より美しいと評しています。
一方で、中の君は浮舟とよく似ているとも
感じています。

中の君の年齢

大君と中の君の年齢差は2歳差でした。
「椎本」巻に、
大君が25歳、中の君は23歳
であるという記述があるのです。

この時点の年齢を基準にすると、
薫と中の君は同い年ということになります。

※匂宮の年齢は不詳ですが、
おそらく薫より2~3歳年上です。
つまり匂宮は、
中の君よりも2~3歳年上ということです。

スクロールできます
巻名出来事中の君の年齢薫の年齢
橋姫薫、大君と中の君の姿を垣間見する。2222
椎本八の宮、死去。2323
総角匂宮と中の君、結婚。2424
早蕨中の君、京に移る。2525
宿木中の君、男子を出産。2626
※匂宮の年齢は不明だが、薫の年齢+2~3か

中の君の身分

中の君は、大君と同じく
八の宮の正妻が出産した娘です。
桐壺院の孫ということになり、
皇族の血をひいている
「女王」という身分です。

中の君は女王なので、
決して低い身分の女性ではないですが、
匂宮は中の君と結婚した後に、
六の君を正妻としています。

六の君の父親・夕霧は時の右大臣、
養母は朱雀院の女二の宮であり
ともに健在です。
女王ではあるが両親のいない中の君
よりも権力・威信のある後ろ盾のある
六の君のほうが正妻にふさわしかった
というわけです。

中の君と匂宮の結婚生活を解説

源氏物語 初心者
中の君と匂宮の結婚生活は、どんな感じだったの?


匂宮は魅力的な貴公子でしたが、
中の君にとって匂宮との結婚生活は
苦しみの連続でした。

時系列で解説します。

①無理やり匂宮と結婚

そもそも中の君は匂宮と結婚したいと
思っていたわけではありません。

匂宮が一方的に、中の君に惚れ込んでしまい、
薫の作戦により寝所に忍び込み、
無理やり男女の関係を結び、
結婚してしまったのです。


結婚当初、中の君は戸惑うばかりで
「嬉しい」といういう気持ちなど
ありませんでしたが、匂宮の愛情は深く、
愛情表現も豊かなので
中の君はやがて匂宮を受け入れ、
むしろ訪問が途絶えると
「寂しい」と感じるようになっていきます。

②匂宮の夜離れが続く

中の君との結婚後、
匂宮は、父帝と母中宮に、
遊び歩きを禁じられてしまい、
宇治の中の君のもとに
自由に来られなくなってしまいます。


中の君と姉大君は
匂宮の夜離れを大変悲しみます。
匂宮自身も中の君に会えなくて
悲しみに沈み、中の君をこっそり京に
移したいと考えますが、
良い家が見つかりません。

この時、匂宮は、
もし自分が将来天皇になったら、
中の君を中宮にしたいとまで考えています。

源氏物語 初心者
匂宮は、いい加減な気持ちで中の君と結婚したわけではなかったんだね。

やがて心労により大君は死去。
匂宮の夜離れの懊悩の上に、
姉の死は、中の君の心に
大きな悲しみを与えます。

③京の二条院に引き取られる

大君の死後、中の君は
二条院の西の対に引き取られます。

大君が死んで薫が嘆き悲しむ姿を見て、
匂宮の母中宮は
「宇治の姉妹は並み並みの女ではないのだろう」
と判断して、中の君を京に
迎えるよう提案したのです。

中の君は妻として重々しく扱われ、
愛されますが、
翌年、匂宮と六の君が婚約。
中の君は、「世間から笑われる」と
ショックを受け、宇治に帰りたいと嘆きます。

④匂宮と六の君の結婚

匂宮と六の君は、予定通り結婚。
匂宮は美しい六の君を気に入りますが、
中の君に対する愛情が消えたわけではなく、
傷ついた中の君を懸命に慰めます。


将来、天皇になる可能性のある匂宮は、
臣下と違って妻を多く持つのは
当たり前だから、
世間も中の君を可哀想と
思っていませんでした。
深く愛されている中の君を
幸福者とさえ思っています。

しかし、中の君は
今まで一夫一妻だったのが
急に変わって受け入れられません。

⑤薫の下心

中の君は匂宮との子を懐妊しますが、
誠実そうに振る舞う薫を見て、
「この人と結婚すればよかった」とさえ
思うようになっていました。

筆者
匂宮が六の君を正室としたことで、深く傷ついてしまったのです。


中の君は、自分を宇治に連れて帰るよう
依頼するくらい薫を信頼していましたが、
薫は、匂宮の愛情が薄くなったら、
愛人とするつもりで妊娠中の中の君に迫ります。

中の君は、信頼していた薫に
下心があると知り、
こうなった以上は、ここ二条院で
匂宮とうまくやっていくしかないと腹をくくります。

⑥男児の出産

中の君は、無事に男児を出産します。
盛大な御産養が開催され、
世間にも匂宮の妻の一人として認知され、
中の君の心も少しは慰められます。

匂宮は薫と中の君の浮気を
疑っていましたが、
美しく愛らしい中の君を
本気で憎むことはできず、
匂宮は中の君を正室・六の君にもまさる
最愛の妻として愛し続けるのです。

⑦浮舟の登場

匂宮の妻として少し自信がつき、
落ち着いていたところへ
中の君の異母妹、浮舟が登場します。

匂宮は、二条院に身を寄せていた
浮舟を発見し、興味を持ちます。
浮舟は薫の愛人となり、
宇治の別荘に滞在しますが、
匂宮は宇治まで行って
浮舟と関係を結んでしまいました。


筆者
浮舟が登場したあたりから、中の君の登場回数は激減し、物語のヒロインは中の君⇒浮舟へと遷移していきます。


中の君はこの頃には、
夫の浮気にひたすら耐える
世の常の女、したたかな妻となっています。

悩んだり嫉妬したりする心情描写は
ほとんど語られていません。

蜻蛉巻では、匂宮は中の君に浮舟とのことを
全て打ち明けているようです。
「自分一人が物思いを知らず、今まで生き永らえていたが、それもいつまで続くかしら」
という中の君の悲しい心情が描かれています。

中の君はなぜ浮舟を薫に紹介したのか

源氏物語 初心者
中の君は、なぜ薫に浮舟を紹介したのかな?


筆者
中の君が薫に浮舟を紹介した経緯を解説します!


薫はもともと大君に片思いをしており、
大君が亡くなった後には、未練をひきずって
「妹の中の君と結婚しておけばよかった」
という述懐を繰り返しています。

中の君が匂宮に愛され、
重んじられていることを喜びながらも、
愛した人(大君)の面影をもつ中の君を
自分のものにしたいという気持ちがあったのです。

薫は、浮舟を知る前は、
中の君に執着していた。

匂宮と六の君の結婚後に、
薫は中の君に恋心を打ち明け、迫り始めます。
中の君は薫の執着に困り果ててしまいます。
ある夕方のこと、薫は中の君に
亡き大君への変わらない思いを語り出します。
そして、薫は「大君に似た人形ひとがたがほしい」と口走るのです。

【原文】
「思おもうたまへわびにてはべり。
音無おとなしの里求めまほしきを、かの山里やまざとのわたりに、わざと寺てらなどはなくとも、昔むかしおぼゆる人形ひとがたをも作つくり、絵ゑにも描かきとりて、行おこなひはべらむとなむ、思おもうたまへなりにたる」

【現代語訳】
「(大君のことが忘れられず)困り果てています。
人の声や物音のしない音無の里を尋ねて行きたいが、あの宇治の山里の辺りに、特に寺というほどではなくても、亡き大君が偲ばれる人形ひとがたを作ったり、絵に描いたりして、勤行をいたしたいと、思うようになりました」

源氏物語 初心者
人形ひとがたってなに!?


筆者
人形とは、祓はらえのときに人の代わりに川に流すものです。


中の君は、亡き大君を忘れられない様子の
薫を気の毒に思い、
唐突に大君そっくりの
異母妹・浮舟の存在を教えたのです。


一方で、中の君は
「何とかして、このような懸想をやめさせて、
穏やかな交流がしたい」
とも思っています。

大君を忘れられない薫への同情&
自分への懸想を止めさせるために
中の君は薫に浮舟の存在を教えたのです。

源氏物語 初心者
自分から興味をそらしたい、という気持ちのほうが、同情よりも大きかったんじゃないかな。

そして、中の君が薫に浮舟の存在を教えたことが、
後に浮舟・薫・匂宮の三角関係に発展し、
悲劇的な展開を迎えるのです。

中の君は幸せだったのか(大君・浮舟との比較)

源氏物語 初心者
中の君は幸せだったのかな?


中の君の人生には、幸福な側面と
そうではない側面とが見られます。

まず中の君の人生の幸福な側面について説明します。

中の君の人生(幸福な側面)

中の君の人生の中で
もっとも幸福だったのは、
匂宮という親王と結婚できたことです。


匂宮は将来、天皇になる可能性のある人物であり、
匂宮自身は、もし将来自分が即位したら
中の君を中宮にしたい
と考えています。

中の君は物語中で男子を出産していますから、
ゆくゆくはその男児が皇太子として立つ
可能性もあるわけです。

中の君は匂宮に最も愛された女性であり、
将来は国母(天皇の母)になる可能性を
持っているのです。

中宮・国母というとこの時代の
貴族女性の頂点であり、
憧れの存在でした。

匂宮の妻として愛され、男子をもうけた中の君は
幸福だったと言うことができるはずです。

中の君の人生(不幸な側面)

筆者
ただし、中の君の人生は幸福なことばかりではありません。


まず中の君を出産した直後に
実の母が亡くなっています。

当時の女房は、中の君に良い感情を持たず、
ろくに世話もしていなかったようです。

その後、大人になってから
父八の宮、姉大君も相次いで他界。
中の君は頼りになる家族を全て失ってしまい、
非常に心細い状態で、
匂宮の妻として京に移っているのです。

それだけではなく、
中の君は匂宮の正妻ではありませんでした。
匂宮は、六の君(夕霧の娘)を
正妻に迎えてしまうのです。
夫が正妻を迎えた際の、
中の君の悲しみは大きく、
薫に対して「宇治に帰りたい」と
本気で頼むほどでした。


さらに、後見として頼りにしていた薫に、
下心があることが判明し、
中の君は相談相手さえ失ってしまいます。
その後、匂宮が浮舟に夢中になっている間も、
中の君はじっと耐えぬきました。

中の君は悲しみや、不安、
嫉妬を抱えながらも、
匂宮の妻としてしたたかに
生きたのです。

源氏物語 初心者
親王の妻という華やかな地位に収まったことは幸福なように見えるけれど、夫婦関係にはさまざまな悩みが絶えなかったんだね。

中の君の人生年表

スクロールできます
巻名出来事中の君の年齢薫の年齢
橋姫薫、大君と中の君の姿を垣間見する。
薫、八の宮死後の姉妹の後見を承諾する。
2222
椎本春、匂宮、宇治を訪問。
匂宮と中の君、和歌を遣り取りする。以降、匂宮、中の君に執心する。
八の宮、娘たちに遺言をした後、山寺にこもる。
8月20日頃、八の宮死去。匂宮、たびたび中の君に弔問の手紙を送る。
中の君、返事が書けず大君が一度だけ代筆して返事を書く。
2323
花盛りの頃(2月下旬)、匂宮と和歌の遣り取りをする。相変わらず匂宮の恋心を突き放す。
夏、薫は大君と中の君の姿を垣間見る。
2424
総角8月、薫は大君の寝所に迫るが、何事もなく朝を迎える。
大君、中の君と薫を結婚させたいと考える。
後日、薫は大君の寝所に再び入るが、大君は中の君を残して逃げる。
薫は相手が中の君であると気づき、実事には及ばず語らって夜を明かす。
8月28日、薫、みたび大君に迫るが大君の心は動かず諦める。その間に匂宮が中の君の寝所に忍び込み契る。
その後、匂宮は中の君のもとに3夜通い続け、結婚が成立する。
匂宮、母中宮に咎められ、自由に宇治へ外出できなくなる。
9月10日、匂宮と薫、宇治を訪問。匂宮、中の君を深く愛し、将来は中宮にしたいと考える。
10月上旬、匂宮と薫、宇治を紅葉狩りのため訪問するが、匂宮は中の君と逢うことなく帰京。
中の君、悲しみながらも匂宮の気持ちを信じる。
大君、思い悩み、食事をとらなくなる。
後日、薫、大君の病気を知り、見舞う。
大君と中の君、匂宮と六の君の縁談を知り、落胆する。
10月末、中の君と匂宮、手紙を遣り取りする。
11月豊明節会の夜、薫に看取られつつ、大君、死去。中の君、薫、深く悲しむ。
薫、中の君と結婚しておけばよかったと悔やむ。
12月、匂宮、中の君を弔問するが、物越しにしか会ってもらえない。
匂宮、薫と中の君の仲を不安に思い、中の君を京に迎えたいと考える。
2424
早蕨匂宮、薫に、中の君を京に迎えることを相談する。薫、悔しさを感じながらも中の君の後見を務めることを決める。
引っ越し前日、薫、中の君に対面し、結婚しなかったことを後悔する。
2月上旬、中の君、京(二条院)へ引っ越す。
薫、匂宮が中の君を大切にしていると聞いて、「取り返したい」と思う。
3月上旬、薫、中の君を訪問し語らう。匂宮、薫の下心を疑う。
25
宿木匂宮、六の君と婚約。
5月頃、中の君、匂宮の子を懐妊。
8月、薫、中の君を訪問し、語らう。中の君、宇治に帰りたがるが、薫に阻止される。薫、中の君を取り返したい気持ちに悩む。
8月中旬、匂宮と六の君、結婚。中の君、大きな悲しみと不安に襲われる。
匂宮、中の君のもとに通えない夜が続く。
薫、中の君を訪問。中の君、再び宇治へ帰りたがる。薫、中の君の手を取り迫るが、自制する。
匂宮、移り香により薫と中の君の浮気を疑う。
薫、衣料を贈るなど、中の君をよく後見する。
薫、中の君を訪問。大君への思いを語りつつ中の君に恋心を語る。中の君、浮舟の存在を薫に初めて語るが、薫はなお中の君を恋慕する。
9月20日過ぎ、薫、宇治を訪問。報告の手紙を中の君に贈る。匂宮、2人の仲を疑う。
2525
1月末、中の君、陣痛が始める。
2月初旬、中の君、男子を出産。
3日の夜、匂宮の私的な祝い。
5日の夜、薫主催の御産養。
7日の夜、中宮主催の御産養。
9日の夜、夕霧主催の御産養。
3月下旬頃、薫、中の君の子を見る。五十日の祝いが開催される。
4月20日過ぎ、薫、宇治で浮舟を見る。
2626
東屋8月、浮舟、二条院の中の君のもとに身を寄せる。
中の君、再び薫に浮舟を勧める。
匂宮、浮舟を見つけて言い寄る。
中の君、知らせを聞いて浮舟を憐れみ、慰める。
浮舟、三条の隠れ家に移る。
9月、薫、浮舟と契る。浮舟、宇治へ移る。
2626
浮舟匂宮、浮舟を思い、中の君を恨む。
薫、なおも中の君を恋慕するが、対面することはなくなっていく。
2626
1月、宇治の浮舟から中の君に手紙が届く。匂宮、その手紙を読んで、浮舟が宇治にいると知る。
匂宮、薫のふりをして浮舟と強引に契る。
浮舟、中の君を思い泣く。
帰邸した匂宮、中の君を責める。
2月、薫、宇治の浮舟に会いにいく。浮舟、煩悶する。
2月10日頃、匂宮、宇治の浮舟に会いにいく。相思相愛となる。
3月、薫、浮舟を京の新築邸に移すことを決める。
薫、匂宮と浮舟の関係を知る。
浮舟、煩悶し、入水を決意する。
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蜻蛉4月、匂宮と中の君、2人で庭を眺める。
匂宮、中の君に浮舟との思い出を語る。
5月、浮舟四十九日の法要。中の君、誦経を寄付、僧に饗応する。
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この記事では、
『源氏物語』の中の君について
詳しく解説しました。

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