MENU
撫子
このサイトの管理人
30代後半の主婦。
高校生の頃から源氏物語に興味を持ち始めました。大学では源氏物語を研究し、日本語日本文学科を首席卒業しました。
30代になり、源氏物語を改めて学びなおしています。
お問い合わせ

漫画「あさきゆめみし」で源氏物語を学ぼう!

【源氏物語】浮舟ってどんな人?性格や容姿などわかりやすく解説!おっとりしていて魅力的な姫君です。

このサイトのリンクには、プロモーション広告が含まれています。
浮舟ってどんな人?容姿や性格などを紹介!おっとりとして魅力的な姫君です。

源氏物語 初心者
『源氏物語』に出てくる浮舟ってどんな人なの?詳しく教えて!


浮舟うきふねは、『源氏物語』の宇治十帖で、
最後に登場するヒロインです。

タイプの違う2人の貴公子(薫と匂宮)
の間で揺れ動き、煩悶する浮舟の姿は、
読者に共感や反感を抱かせ、
良くも悪くも記憶に残る登場人物となっています。


『源氏物語』の最後を飾るにふさわしい
儚さと陰鬱さを備えた浮舟について、
この記事で詳しく解説していきましょう。

この記事でわかること

浮舟について
相関図、性格、容姿、年齢、身分
などを詳しく解説しています。

その他、
・浮舟が可哀想だと言われるポイント
・浮舟が嫌われる理由
・浮舟が最後どうなったか
・浮舟の人生年表
についても記載しています。

下記の目次をタップして、
読みたいところからお読みください😊

目次

浮舟ってどんな人?性格や容姿を解説!

ここでは、浮舟の

  • 相関図
  • 性格
  • 容姿
  • 年齢
  • 身分

について詳しく解説していきます。

まずは相関図と周辺の人間関係から説明していきますね!

浮舟の相関図と人間関係

こちらは、浮舟の周辺に
クローズアップした人物相関図です。

【源氏物語】浮舟の相関図
浮舟周辺の相関図

※薫は、女三の宮と光源氏の子となっていますが、
 本当は女三の宮が柏木と密通して生まれた子どもです。


『源氏物語』第三部全体の相関図は、
こちらです。

『源氏物語』第三部の相関図
『源氏物語』第三部の相関図
※タップして拡大します

浮舟に関わる主要な登場人物について
簡単に紹介します。

浮舟うきふね
宇治八の宮と愛人の中将の君の間に
生まれた子。
大君、中君の異母妹である。
亡き大君と顔がそっくりなので、
大君の代わりとして薫に愛されるが、
匂宮にも愛されるようになり、
三角関係に苦しむ。


中将の君:浮舟の母
宇治八の宮の亡き北の方の姪。
八の宮との間に浮舟をもうけるが
八の宮には冷たくあしらわれ、
後に常陸の介と結婚する。
父親のいない娘・浮舟をなんとか
世間並みに幸福にしたいと願い、
薫と結婚させようとする。

中君なかのきみ
宇治八の宮の娘。大君の妹。
浮舟は大君と中君の異母妹である。
大君亡き後、薫は中君を恋い慕う。
薫の好意に困惑した中君は、
薫に妹の浮舟を紹介する。

大君おおいきみ
宇治八の宮の娘。中君の姉。
薫は大君に恋をしていたが、
大君は薫の気持ちを拒否したまま
病によりこの世を去る。

かおる
表向きは光源氏と女三の宮の子だが、
本当は柏木と女三の宮が
密通して生まれた子である。
恋い慕っていた宇治の大君を
亡くした後、中君に浮舟を紹介される。
薫は、大君と顔が似ている浮舟に、
思いを寄せ、愛人とする。


匂宮におうのみや
光源氏の孫であり、
明石の姫君と今上帝の皇子。
宇治の中君と
夕霧の娘・六の君を妻とする。
薫の愛人となっていた浮舟に
興味をひかれ、男女の関係になる。
以降は浮舟を愛するようになる。


宇治八の宮:
桐壺院の第八皇子であり、
光源氏の弟。
大君、中君の父親。
浮舟のことは、
娘として認知しないまま
亡くなっている。


小君こぎみ
浮舟の異父弟。
父親は、常陸の介である。
「夢浮橋」の巻で、
薫の使者として小野の浮舟を訪問する。

常陸の介:
浮舟の養父。
身分は高くないが財産は多い。
浮舟よりも実の娘のほうを
可愛がっている。

弁の尼:
柏木の乳母の子。
八の宮の女房として仕えていた。
大君が亡くなった後に出家している。
薫と浮舟の仲立を引き受ける。

浮舟の人間関係を理解する上で重要なのが、
薫および匂宮との三角関係です。

浮舟は、まず薫の愛人となりますが、
その後で匂宮が寝所に忍び込み、

浮舟と男女の関係を結んでしまうのです。

薫は、真面目で優柔不断な性格
匂宮は、軽薄で情熱的な性格

浮舟は、薫とは違った魅力をもった
匂宮に心惹かれていきます。


しかし、匂宮は、
浮舟にとっては異母姉である
中君をすでに妻としており、
浮舟は中君への罪悪感に悩みます。

やがて、匂宮と浮舟の関係は
薫の知るところとなり、
浮舟と薫の板挟みになった浮舟は、
どちらも選ぶことができず、
宇治川への入水という最悪の決断を下します。

もっと詳細な宇治十帖のあらすじは、
こちらの記事で紹介しています。

浮舟の性格

浮舟の性格を簡単にまとめると、

  • 穏やかでおっとりしている
  • 頼りない
  • 純情である
  • 流されやすい

です。
原文を引用しつつ、具体的に浮舟の性格を
説明していきます。

穏やかでおっとりしている

浮舟の性格は、
「児めく」「おほどく」といった言葉で
表現されています。
どちらも「おっとりしている」という意味です。

【原文】
容貌かたちこころざまも、えにくむまじうらうたげなり。
ものぢもおどろおどろしからず、さまようめいたるものから、かどなからず、ちかくさぶらふひとびとにも、いとよくかくれてゐたまへり。

【現代語訳】
(浮舟は)容姿も性格も、憎むことができないほど可愛らしい。
はにかんでいる様子も大げさでなく、よい具合におっとりしているけれど、才気がないというわけではなく、近くに仕えている女房たちに対しても、とてもうまく隠れていらっしゃる。

『源氏物語』「東屋」の巻より引用

次の引用は、中君に預けられている時に
匂宮に襲われそうになった後の
浮舟の描写です。

【原文】

われ
にもあらず、
ひと

おも
ふらむことも
づかしけれど、いとやはらかにおほどき
ぎたまへる
きみ
にて、

でられて
たまへり。

【現代語訳】
(浮舟は)上の空で、皆が(自分と匂宮について)想像しているだろうことも恥ずかしいけれど、たいへん素直でおっとりし過ぎていらっしゃる姫君で、押し出されて座っていらしゃった。

『源氏物語』「東屋」の巻より引用

浮舟は、穏やかでおっとりとした性格で、
とても可愛らしい雰囲気の姫君です。


ちなみに、おっとりしているといっても、
まったく機転がきかないわけではありません。
思慮がぜんぜん無いというわけでもありません。
それなりに気の利いた受け答えもできるし、
人前に簡単に姿を見せない奥ゆかしさは備えています。

頼りない

浮舟は、のんびりして自己主張をせず、
頼りない印象の姫君でした。

異母姉の大君もおっとりとした性格でしたが、
思慮深さが浮舟よりもまさっていて、
薫からしてみれば安心な女性でした。

浮舟はのんびりした印象がより強く
大君と比べると思慮が足りない感じがして、
薫が不安になるくらいでした。

三条の隠れ家で一夜をすごした浮舟と薫は、車に乗って宇治へ向かう。
邸の外には物売りの姿が見える。
「源氏物語画帖 東屋」住吉如慶筆 江戸時代

冗談をいっても、
ひたすら恥ずかしがっている様子なので、
薫は物足りなさを感じています。

【原文】
故宮
こみや

おほん
ことものたまひ
でて、昔物語
むかしものがたり
をかしうこまやかに

たはぶ
れたまへど、ただいとつつましげにて、ひたみちに
ぢたるを、さうざうしう
おぼ
す。

【現代語訳】
(薫は)亡くなった八の宮の事もお話しになり、昔話を興趣深く情をこめて冗談もおっしゃるが、(浮舟が)ただとても遠慮深そうにして、ひたすら恥ずかしがっているのを、(薫は)物足りないとお思いになる。

『源氏物語』「東屋」の巻より引用

薫は、頼りない浮舟に不満を感じますが、
下品な女よりは頼りないくらいが
良いと思いなおし、
浮舟にいろいろな教育を施そうと考えるのでした。

筆者
薫の母、女三の宮もとても頼りない性格でした。浮舟は、女三の宮よりは思慮がありますが、どことなく似ているかも知れませんね。

光源氏の愛した夕顔も、
なよなよと儚いところや
素直なところなどが浮舟に似ていますね。

純情である

浮舟は、とても純情な女性です。

クールな薫とは違い、
情熱的な愛情表現をする匂宮の言葉を
すべて信じ込んで、
匂宮を愛するようになっていきます。

【原文】
「いみじくおぼすめるひとは、かうは、よもあらじよ。
見知みしりたまひたりや」
とのたまへば、げに、と
おも
ひて、うなづきて
たる、いとらうたげなり。

【現代語訳】
(匂宮が)「(あなたが)大切にお思いの方<薫>は、このようには、なさらないでしょうよ。
お分かりになりましたか」
とおっしゃると、(浮舟は)おっしゃる通りだわ、と思って、うなずいて座っているのは、たいそういじらしげである。

『源氏物語』「浮舟」の巻より引用

匂宮は光源氏の血をひいているせいか、
恋人が数多くいて、
女性とのコミュニケーションが得意です。
浮舟は匂宮の口から発せられる甘い言葉を、
真心からのものと信じて、心惹かれていきました。

浮舟を宇治川対岸の山荘に連れ出した匂宮。雪山を見ながら歌を詠みかわす。
「源氏物語絵詞 浮舟・蜻蛉」
筆者
実際に匂宮は、一時的には浮舟のことを本当に愛していました。しかし、三角関係により浮舟は追い詰められていき、宇治川に入水を決意するにいたります。

教養はあまり高くない

性格とは違いますが、
浮舟の教養についても少しふれておきましょう。

浮舟の母は、陸奥国や常陸国で
国司をつとめる中流貴族と結婚しました。
そのため、浮舟も連れ子として東国に移り、
じゅうぶんな教養を受けずに育ちました。


浮舟は物語中でいくつも和歌を詠んでいますが、
古歌を引用しておらず、技巧に富んだ和歌を
作っていないところから、
浮舟が高い教養を受けていないことがうかがえます。
和琴も演奏できないと話しています。

さらに、三角関係に悩んだ浮舟が
宇治川に入水するという
極端で乱暴な方法を考えついたのも、
教養不足により、
問題の解決策として死しか思いつかなかったと
語られています。

【原文】

めきおほどかに、たをたをと
ゆれど、気高
けだか

のありさまをも

かた
すくなくて、
おぼ

てたる
ひと
にしあれば、すこしおずかるべきことを、
おも

るなりけむかし。

【現代語訳】
子供っぽくおっとりとして、たおやかに見えるが、気品高く人生の意義を知ることも少なくて育った人なので、少し乱暴なことを、考えついたのであろう。

『源氏物語』「浮舟」の巻より引用
入水した浮舟は、横川僧都に助けられる。
その後、浮舟は剃髪をし、出家を遂げる。
伊年印「源氏物語図 末摘花・手習」
浮舟の性格まとめ

おっとりしていて、可愛らしい印象。
教養は高くなく、のんびりで
頼りない性格だが、まったく思慮がない
というわけではない。
世間ずれしていないピュアな性格で
情熱的なアプローチに弱い。

源氏物語 初心者
浮舟の性格については、よく分かったよ。浮舟の顔は、どんなだったの?

浮舟の容姿

浮舟の容姿は、
異母姉・大君にそっくりな美人です。

可愛らしく愛嬌のある顔立ちをしていて、
パーツの細かいところに

美しさが宿っています。
色白で髪の裾はたっぷりと美しく、
体つきはほっそりとしています。


いくつか原文を引用してみましょう。

【原文】

こころ

れて
たまへる灯影ほかげ、さらにこことゆるところなく、こまかにをかしげなり。
ひたひつき、まみのかをりたる心地ここちして、いとおほどかなるあてさは、ただそれとのみおもでらるれば、


【現代語訳】
(浮舟が絵を)熱心に御覧になっている燈火に照らされた姿は、まったくこれという欠点もなく、繊細で美しい。額の具合、目もとがほんのりと匂うような感じで、とてもおっとりとした上品さは、ただもう亡くなった大君ばかり思い出されるので、

『源氏物語』「東屋」の巻より引用

【原文】

しろ

あふぎ
をまさぐりつつ、

したるかたはらめ、いと
くま
なう
しろ
うて、なまめいたる額髪
ひたひがみ

ひま
など、いとよく
おも

でられてあはれなり。

【現代語訳】
白い扇を手に持って遊びながら、添い寝していらっしゃる横顔は、まったく隅々まで色白で、優美な額髪の間などは、(大君のことが)非常によく思い出されて感慨深い。

『源氏物語』「東屋」の巻より引用

源氏物語 初心者
浮舟は、とっても綺麗な女性なんだね!


浮舟と大君は、
父の八の宮によく似ていました。
異母姉妹ですが、
父親似同士で顔がそっくりだったのです。

中君は、母親似だったので、
顔だちはちょっと違ったようですが、
匂宮は中君を見て、
「浮舟に似ている」と感じています。

浮舟の母は大君・中君の母の姪だったこともあり、
三姉妹全員、顔が似ていたのです。

浮舟と大君・中君の違い

大君も浮舟も、品があって、
なよなよと柔らかい雰囲気の女性でした。
2人は顔もそっくりです。
しかし、浮舟は、
初々しく遠慮がちな感じがして、
思慮が足らず
重々しさや優雅さという点では
大君に劣っていました。

中君は才気あふれる美しさの輝く人で、
大君よりも中君のほうが魅力的な容姿でした。
ゆえに、当然ながら
中君に比べて浮舟の容姿は
見劣りがしていました。
匂宮の正室・六の君の美しさと比較しても、
浮舟は話にならないほど劣っていたのです。

筆者
それでも浮舟の、おっとりとしてピュアな可愛らしさは、匂宮を魅了する力があったようです。


源氏物語 初心者
浮舟は、「絶世の美女」だったわけじゃないだね。中君や六の君のほうが美しかったんだね。

浮舟の年齢

源氏物語 初心者
浮舟は、何歳だったの?


「宿木」の巻で、弁の尼が
浮舟の年齢は20歳くらいであると語っています。

【原文】
かの
きみ

とし
は、二十
はたち
ばかりになりたまひぬらむかし。

【現代語訳】
あの君の年齢は、二十歳くらいにおなりでしょう。

『源氏物語』「宿木」の巻より引用

この時、薫は26歳だったので、
薫と浮舟2人の年齢差は
およそ6歳だったということになります。

巻名出来事浮舟の年齢薫の年齢
宿木薫、宇治で浮舟を垣間見る。<夏>20歳26歳
東屋薫と浮舟、男女の関係となる。<秋>20歳26歳
浮舟匂宮と浮舟、男女の関係となる。<1月>
浮舟、宇治川に入水する。<3月>
21歳27歳
手習浮舟、出家する。<9月>21歳27歳
夢浮橋浮舟、小君との対面を拒否する。22歳28歳

浮舟は、なんと21歳という若さで
出家をしたことになります。

出家をした浮舟(左側の後ろ向きの女性)
薫からの手紙を持って訪問した異父弟の小君を懐かしく思う。
「源氏物語手鑑 夢浮橋」土佐光吉著 桃山時代

浮舟の身分

浮舟は、宇治八の宮の子です。
桐壺院の孫ということになり、
皇族の血をひいてはいますが、
身分はあまり高くありません。

なぜなら浮舟は、
八の宮が女房である中将の君と
一時的に関係を持ってできた娘であり、
八の宮は浮舟を自分の娘であると
認知していないからです。

中将の君は、
八の宮の亡くなった北の方の姪ですが、
後妻になることもできず、
浮舟が生まれてからは八の宮に
冷たくあしらわれ、
常陸の介と結婚しています。

なので、浮舟は
実質的に常陸の介の娘であり、
中流貴族の一員ということになります。

筆者
八の宮の娘として認められていれば、浮舟は、大君や中君と同じ「女王」という身分でしたが…。


常陸の介は、
身分は高くありませんが、財力はありました。

常陸の介の邸は、若い女房が集まり、
派手な衣装を着て、下手な歌合を頻繁に
開催しているような場所でした。

常陸の介は自分の娘と
連れ子である浮舟とを差別していたので、
浮舟は肩身の狭い思いをしていたし、
田舎育ちゆえに教養もじゅうぶんには
つけられませんでした。

浮舟の魅力

浮舟の魅力は、「浮舟」の巻において
とてもよく表されています。

浮舟の魅力とは、
愛したり、悩んだり、絶望したりなど、
人間らしい感情を豊富に見せてくれるところです。


三角関係に陥り、
薫や中君に罪悪感を抱く一方で、
匂宮のことが忘れられない浮舟の心理描写は
とても生々しいです。

まるで、現代の恋愛ドラマを
見ているかのような
じれったい、ハラハラした感覚にさえなります。

浮舟は愛情表現の豊かな匂宮を好きになってしまう。
匂宮は浮舟を舟で連れ出し、2日間2人で過ごす。
「源氏物語色紙絵 浮舟一」土佐光元著 室町時代

そして、
匂宮との将来に期待がもてないとわかり、
薫にも匂宮との関係がバレてしまった時に
絶望し、思いつめ、宇治川への入水を決断する
にいたる浮舟の思索は、たいへん深刻で
緻密に描写されています。

浮舟の決断に対しては、
同情であったり批判であったり
人それぞれ抱く感情は異なると思いますが
それだけ議論が巻き起こる行動を
とらざるをえない状況こそが、
浮舟の魅力と言えるのではないでしょうか。

源氏物語 初心者
確かに、浮舟は最初ただただおっとりした女性だったけど、匂宮との出会いによって、人間らしさが加わったような感じがするね。

浮舟がかわいそうだと言われる理由

源氏物語 初心者
浮舟って、なんだか、可哀想な人生だよね…?


浮舟のことを、「かわいそう」だと思う人は多いです。

ここでは、浮舟のどういうところが
かわいそうかを考察してみます。

母親の言いなりになっている

匂宮と出会うまでの浮舟は、ほとんど
母親の思い通りの人生を送っていました。

・浮舟と左近少将の縁談を進める(破談)
・浮舟を中君のもとに預ける
・浮舟を三条の隠れ家に隠す
・浮舟と薫が結ばれる

浮舟は、母親の思惑通りに生きており、
自らの希望を主張することはありませんでした。

現代的に言えば、
浮舟の母は毒親ということになるでしょうか。

浮舟の母は、
思慮が浅いというわけではないですが、
怒りっぽくて、
感情のままに行動する傾向が強く、
浮舟は翻弄されているように見えます。

自分の意志とは無関係に、あちらこちらと
根無し草のように移ろって
流されていく浮舟は、とても可哀想ですね。


しかし、この時代、貴族の娘の結婚相手は
親が決めることが多かったのだから、
平安時代の価値観でいえば、
我が子に一生懸命な浮舟の母は
決して悪い母ではなかったのかも知れません。

「手習」の巻で小野にて生還した浮舟は、
何度も母親を恋しく思っているのです。

筆者
もとはといえば、実父の八の宮が浮舟を娘として認知していれば、浮舟は女王という身分で、もっとスムーズな人生を送れたことでしょう。

三角関係の末に宇治川に入水→出家

浮舟は、薫と匂宮との三角関係に悩んだ末に、
宇治川に入水します。
横川僧都に救助された浮舟は、
さらに小野の山荘で出家をしてしまいます。

筆者
入水からの出家…!この流れは本当にかわいそうです。


出家 = 不幸(可哀想)

という図式が安直すぎると
違和感を持つ人もいるかも知れませんが、
まだ20代前半という若さで、
結婚も出産も諦めて、家族を捨て、
仏道修行の道に入らざるをえなかった
浮舟の境遇は、とても可哀想だと私は思います。


自分の意志とは無関係に、
薫の愛人となったまでは、
『源氏物語』ではありがちな展開でした。
しかし、匂宮の存在により、
浮舟の運命は大きく狂わされてしまいました。

おそらく浮舟が初めて愛した男性は、匂宮です。
せっかく愛を知ったのに、三角関係に煩悶し、
追い詰められていく浮舟は、まさに悲劇のヒロインです。

匂宮との逢瀬を察した薫からの手紙に、返事が書けなくて悩む浮舟。
「源氏物語絵詞 浮舟・蜻蛉」

筆者
入水を決意した後に、浮舟が、匂宮からの手紙を顔に押し当てて泣くシーンは、本当に可哀想です。常に匂宮の面影がちらついて、浮舟は匂宮が好きで好きで仕方なかったのです。


結果的に、薫と匂宮
どちらも選ぶことができず
すべてを捨て去った浮舟は、
小野でわびしい出家生活を送ります。

左近少将との破談

浮舟は、薫や匂宮と出会う前に、
左近少将という人物に求婚されていましたが、
浮舟が常陸の介の実の娘ではないとわかり
左近少将は浮舟との結婚を破談にしています。

左近少将は常陸の介の財産目当てでした。
継娘と結婚すると、
得られる恩恵が少なそうだし、
世間からただの財産目当てと
思われる可能性もあるから、
あくまで実娘にこだわったのです。

さらに浮舟がもともと生活していた部屋に
実娘と結婚した左近少将が住むことになり、
浮舟は居場所を失ってしまいます。

源氏物語 初心者
浮舟、厄介者扱いされて、とっても可哀想だね…。


筆者
これだけでも可哀想なのに、さらにここから浮舟は、中君のもとに預けられ、薫・匂宮との三角関係がスタートするのです。


左近少将との破談エピソードは、
これから起きるさらなる悲劇の序章のような
位置づけとなっています。

「浮舟が嫌い」という人が多い理由

浮舟は、「可愛い」や「可哀想」と好意的に
受け止める人がいる一方で、
「嫌い」「イライラする」という感想も多いです。

浮舟のどういうところが嫌われるのが、
考察してみましょう。

貞操観念がゆるい

浮舟は、2人の貴公子(薫と匂宮)と男女の関係になります。
薫という恋人がいるのに、匂宮を受け入れ、
心を開いていってしまう様子に
貞操観念がゆるく、尻軽な印象を受ける読者もいます。


最初の逢瀬に関しては、
薫のふりをした匂宮が、
寝所に忍び込んで強引に襲ったので、
浮舟は対策の仕様がなかったのです。

しかし、
すぐに匂宮のことを好きになってしまい、
二度目の逢瀬も遂げてしまうところに、
倫理観の低さや分別のなさを見る人もいるでしょう。

匂宮は浮舟を連れ出して舟に乗せ、対岸の小島を目指す。 「池田家伝来貝合わせ道具」江戸時代
小舟に乗って逢瀬を楽しむ匂宮と浮舟
「池田家伝来貝合わせ道具」江戸時代

決断力がない

薫という恋人がいながら、
匂宮を愛してしまった浮舟ですが、
どちらか一人決めることができず、
くよくよと悩み続けます。


結局は、どちらも選ぶことができず、
普通に生きることができないなら、
死んでしまいたいと
宇治川に身を投げてしまうのです。

自分の行動に責任を負わず、
決断をすることを放棄して、
逃げてしまうような行動に嫌悪感を抱く人も多いです。


筆者
おっとり、なよなよとして、自己主張をしないところが、浮舟の魅力でもありますが、人によってはそういうところがイライラするポイントとなります。


源氏物語 初心者
浮舟はどちらも傷つけたくなくて、どちらも選べないんだよね。それは、ズルさなのか?愚かさなのか?それとも優しさなのか…。

浮舟は最後どうなった?

源氏物語 初心者
宇治川に入水した浮舟は、最後どうなったの?


宇治川に身を投げた浮舟は、「手習」の巻で
川岸の木の下に打ち上げられて
瀕死となっているところを
横川僧都に助けられました。

その後は、比叡山の麓の小野という場所に移り、
尼集団に交じって山荘で暮らしています。

僧都の妹尼の娘は既に亡くなっていますが、
その娘の婿だった人物(中将)が
浮舟を気に入り、執拗に言い寄っています。
しかし、もはや浮舟は
誰とも結婚をする気はなく、
横川僧都に頼み込んで出家をしました。

その後、薫は浮舟の生存を知り、
浮舟の異父弟である小君に手紙を持たせて
小野に遣わしますが、
浮舟は、小君に会おうともしないし、
薫に返事を書こうともしません。

薫の手紙を持って小野を訪れた小君(左)
浮舟(右上)は顔を合わせようとしなかった。
『源氏物語絵巻 夢浮橋』(部分)住吉具慶筆 江戸時代

『源氏物語』のお話は、ここで終わっていますが、
鎌倉時代に書かれた続編『山路の露』では
後日談が語られています。
浮舟と薫の再会、浮舟と浮舟の母との再会
などが情味豊かにつづられています。

室町時代に書かれた『雲隠六帖』では、
浮舟は還俗し、薫と結婚しています。

浮舟の人生年表

巻名出来事薫の年齢浮舟の年齢
宿木夏頃、浮舟母子、東国から京に移り、中君を訪ねる。
<9月>薫、中君から浮舟の話を聞く。
25歳19歳
宿木<4月>薫、宇治で浮舟を見る。26歳20歳
東屋浮舟と左近少将の縁談が破談となる。
<8月>浮舟、中君のもとに預けられる。
匂宮、浮舟を見つけ、言い寄る。
母、浮舟を三条の隠れ家に移す。
<9月>薫、浮舟と一夜を過ごす。
翌日、浮舟を宇治に隠す。
26歳20歳
浮舟<1月>匂宮、浮舟が宇治にいることを知る。
匂宮、浮舟の寝所に忍び込み、男女の関係に。
浮舟、匂宮に心惹かれていく。

<2月>薫、久しぶりに宇治を訪問し浮舟に対面する。
匂宮、浮舟を訪問し、仲睦まじく過ごす。
<3月>薫、浮舟を京に移す日程を決める。
浮舟、恋の板挟みに苦しみ、入水を決意。
匂宮、宇治に赴くが浮舟に会えずに帰京する。
27歳21歳
蜻蛉<3月>浮舟失踪。27歳21歳
手習<3月>宇治川に入水した浮舟、瀕死のところを横川の僧都に助けけられる。27歳21歳
蜻蛉<3月>女房ら、浮舟の葬儀を済ませる。
薫、匂宮、浮舟が死んだと思い、深く悲しむ。
27歳21歳
手習<6月>浮舟、意識を回復する。
浮舟、頭頂部の髪を削ぎ、僧都から五戒を受ける。
<7月>尼君の亡き娘の婿・中将、浮舟を垣間見る。
<8月>浮舟、中将の求愛を拒絶する。
<9月>中将来訪、浮舟、奥の部屋に逃げ込む。
浮舟、横川の僧都に懇願して出家する。
27歳21歳
手習<3月>薫、浮舟の一周忌を営む。
薫、明石の中宮に仕える小宰相の君から
浮舟生存の知らせを受ける。

28歳22歳
夢浮橋薫、横川の僧都を訪ね浮舟のいる小野への案内を依頼する。
翌日、浮舟の異母弟・小君が薫の使者として
小野を訪問するが、浮舟は対面を拒否し、文の返事も書かない。
28歳22歳

小野における浮舟は、『竹取物語』のかぐや姫が
モデルとなっていると言われています。

こちらの記事で詳しく解説しました。
興味がありましたら、
ぜひ読んでみてください。

当ブログでは、他にも色々な視点で
『源氏物語』について解説しています。

気になる記事があれば、読んでいってくださいね😊

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次