MENU
撫子
このサイトの管理人
30代後半の主婦。
高校生の頃から源氏物語に興味を持ち始めました。大学では源氏物語を研究し、日本語日本文学科を首席卒業しました。
30代になり、源氏物語を改めて学びなおしています。
お問い合わせ

漫画「あさきゆめみし」で源氏物語を学ぼう!

伊勢物語:初段「初冠」の解説・原文・現代語訳

伊勢物語:初段「初冠」の解説・原文・現代語訳

この記事では、『伊勢物語』の初段「初冠」の
原文・現代語訳・解説を掲載しています。

この章段は、『源氏物語』「若紫」の巻に
大きな影響を与えていると言われています。

『伊勢物語』とは、在原業平(825~880)の
和歌や逸話をもとに、作られた歌物語です。

目次

『伊勢物語』初段「初冠」:原文・現代語訳

【現代語訳】
 昔、ある男が、元服をして、奈良の京の春日かすがの里に、所領する土地の縁があって、鷹狩たかがりに行きました。その里に、たいへん優美な姉妹が住んでいました。この男は、その姉妹の姿を物の隙間から覗いて見てしまいました。思いがけず、この旧都に、まったく不似合いな様子で美女たちがいたので、男は動揺してしまいました。男は、着ていた狩衣かりぎぬの裾を切って、その裾に歌を書いて贈ります。その男は、信夫摺しのぶずりの狩衣を着ていたのでした。

♪春日野の若い紫草むらさきのように、美しいあなた達に出会って、私の心は、この紫の信夫摺の模様のように、いつまでも乱れに乱れております

と、すぐに詠んで贈ったのでした。このように、事のなりゆきで女に歌を詠んで贈ることが、趣の深いことだと思ったのでしょう。この歌は、

♪あなたの他の誰かのせいで、陸奥みちのくのしのぶもじずりの模様のように、心が乱れるようになった私ではありませんのに。私の心が乱れているのは、あなたのせいなのですよ。

という、源融みなもとのとおるの詠んだ歌のおもむきによったものなのです。昔の人は、このように、情熱をこめた風流な行動をしたのです。

【原文】
 むかし、をとこ初冠うひかうぶりして、奈良の京春日きゃうかすがの里に、しるよしして、かりにいにけり。 その里に、いとなまめいたるをんなはらからすみけり。この男かいまみてけり。 おもほえず、ふる里にいとはしたなくてありければ、心地ここちまどひにけり。 男の、着たりける狩衣かりぎぬすそをきりて、歌を書きてやる。 その男、信夫摺しのぶずりの狩衣をなむ着たりける。

  春日野かすがの若むらさきのすりごろもしのぶの乱れかぎりしられず

となむおひつきていひやりける。ついでおもしろきことともや思ひけむ。

  みちのくのしのぶもぢずりたれゆゑに乱れそめにし われならなくに

といふ歌の心ばへなり。昔人むかしびとは、かくいちはやきみやびをなむしける。

語句解説

初冠:元服のこと。
男子が成人して冠をつけること。
元服の年齢は十代で、
高貴な家の子ほど早かった。

信夫摺:忍草の茎や葉を
すりつけて染めたもの。
「しのぶもじずり」と同じ。
ねじれた形の模様。

若むらさき:若々しい紫草。
姉妹を紫草に喩えつつ、
紫草で忍草模様にすった衣
のねじれた模様のように
私は思い乱れていると歌いあげている。

解説:『源氏物語』との関連

『伊勢物語』初段は、美しい姉妹を垣間見て、
心を動かし、恋の和歌をただちに詠むという
若々しい行為を「いちはやきみやび」
であると称賛するものです。

この章段は、『源氏物語』の「若紫」巻
および「橋姫」巻に
影響を与えていると言われています。

こちらの記事で詳しく解説しています。

また、光源氏が若紫を盗み出したのは、
『伊勢物語』初段で言うところの
「いちはやきみやび」であるとも指摘されています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次