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撫子
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30代後半の主婦。
高校生の頃から源氏物語に興味を持ち始めました。大学では源氏物語を研究し、日本語日本文学科を首席卒業しました。
30代になり、源氏物語を改めて学びなおしています。
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本居宣長:もののあはれの論の現代語訳・原文および要約(紫文要領)

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本居宣長もののあはれの論 現代語訳・原文・要約

この記事では、本居宣長『紫文要領』の
「大意の事(上・下)」について
現代語訳と原文および要約を掲載しています。

この部分は、「もののあはれの論」と呼ばれています。

目次

もののあはれ論の現代語訳・原文(紫文要領)

下記の目次をクリックすると、
現代語訳・原文のページに移ります。


 上

1.物語とは「もののあはれ」を知らせるもの
2.蛍の巻の物語論から紫式部の意図を読み取る
3.古来の注釈書は間違いが多い
4.『源氏物語』の善悪の基準は「もののあはれ」
5.女は「もののあはれ」を知った上でほどよい態度をとるべき
6.「もののあはれ」についての詳述

大意の事 下

7.恋愛は「もののあはれ」が深い
8.「もののあはれ」と浮気っぽいのとは別物
9.『源氏物語』は教訓の物語ではない
10.光源氏と藤壺の密通を書いた紫式部の意図
11.人の真実の感情を知ることが「もののあはれ」を知ること

※論文の中で出てくる
『源氏物語』の引用文は、
青字にしてあります。

※PCで見ると、
現代語訳・原文が横に並んで
表示されるので、
スマホより見やすいです。

※完全な直訳ではありません。
分かりやすいように、
文章を区切ったりしている箇所があります。

本居宣長「もののあはれ」論の要約

紫文要領「大意の事」上・下にあたる部分を
要約しました。

日本の物語と、
中国の儒教・仏教の書物とは、
まったく種類が違っており、
本質が異なっている。

日本の物語は、
自然に思った感情を繊細に書き表して、
人の感情とはこのようなものだ

ということを見せたものである。
読者は、物語を読むことで
世間の様子や人の気持ちを知り、
物事の本質を見抜き、「もののあはれ」を
理解するのである。


中国の書物は、感情を隠し、
とりつくろって、賢ぶった内容である。

日本の物語と中国の書物とは
作り方がまったく違うから、
中国の書物を基準として、
日本の物語を評価してはならない。

「もののあはれ」とは、
見たり聞いたりしたものに対して、
珍しい、愛おしい、恐ろしい、悲しい、

などの感情を抱き、心が動くことである。
『源氏物語』の核心も、
「もののあはれ」を読者に理解させることである。


『源氏物語』を勧善懲悪や教訓のための
物語と理解するのは、全くの間違いである。
『源氏物語』はただ「もののあはれ」を
表現することを目的に書かれた物語である。


『源氏物語』における善い・悪いは、
一般的な道徳で言われている
善い・悪いとは意味が異なっている
ことに注意しなければならない。

『源氏物語』では、
「もののあはれ」を知っている人を

善い人とし、
「もののあはれ」を知らない人を

悪い人とする。
「もののあはれ」を表現することが目的だから、
その行為の道徳的な善悪は無視して関心を持たない。

『源氏物語』では、「もののあはれ」
の有無が善悪の判断基準であり、
通常の道徳とは異なっているということだ。
密通を犯した悪人であるはずの光源氏が、
栄華を極めて、物語中で最後まで
良く書かれていることにより、
これを理解しなければならない。
光源氏は、多くの恋をしていて、
『源氏物語』の中で最も「もののあはれ」
の深い人物であるから、
善い人として表現されているのだ。

藤壺の宮も、「もののあはれ」を
感じやすい善い人である。
「もののあはれ」を感じやすい心を
持っているからこそ、光源氏との
密通を受け入れてしまったのだ。

女は、浮気っぽいのは良くないが、
貞淑すぎるのも良くない。
どちらかに極端ではなく、
ほどよい態度をとるべきだ。
要するに、「もののあはれ」を
充分に知りながらも、
それを口に出し過ぎず、
ほどよく態度に表すのがよい、
ということだ。

源氏にとって、藤壺は、
何ごともほどよい態度をとり、
非難される点のない完璧な貴女であった。
紫の上も、「もののあはれ」を深く知った
善い人である。

「もののあはれ」を知ることと、
浮気っぽいのとは無関係である。
光源氏や浮舟などが、
複数人と関係を持っているのは、
「もののあはれ」が深いがゆえに、
気持ちを抑えられない結果、
そうなっているのだ。
本当の浮気っぽい人というのは、
「もののあはれ」が無いからこそ、誰とでも関係を持つ。

なぜ『源氏物語』には
恋愛の話が多いかというと、
「もののあはれ」は、

恋愛において最も深いものだからだ。

桐壺院や光源氏、夕霧、柏木など、
みな抑えきれない恋心を描くことで、
「もののあはれ」を表現している。
「もののあはれ」を深く知っている人は、
他人の恋についても理解が深い。
例えば、朱雀院は
光源氏と朧月夜の密通を容認し、
光源氏は正室・女三の宮と密通した
柏木の死を深く悼んでいる。

それでは、なぜ光源氏と藤壺の密通の恋を
書く必要があったかというと、
恋愛の中でも不倫の恋は
特に「もののあはれ」が深いからである。

不倫の恋は逢瀬が難しく
世間が許さないゆえに、
感情が深いものである。
また、光源氏を天皇(冷泉帝)の父に
することによって、
光源氏が太上天皇の尊号を得る
必然性を作るという意図もある。
密通による冷泉院の出生に、
教訓の意味はないというところに
注意しなければならない。

また、古来の注釈書では、
やたらと仏教の内容を引き合いに出して、
無理なこじつけをして
『源氏物語』を論じている。
これらの注釈書は、
表面的な文章さえきちんと検討せず、
いい加減なことを述べているので、
学者たちを惑わせている。信用してはいけない。

『源氏物語』で仏教について
多く触れられているのは、
仏教には、
もののあはれの深い一面があるからだ。
仏教の僧侶は、
厳しい修行を耐え忍ぶものなので、
もののあはれを感じている余裕はない。
しかし、人が人生の不幸に直面して、
悲しみ、出家していく様子は、
情感豊かで、もののあはれが深いものである。

もののあはれ論の要点

・『源氏物語』とは、
ただ「もののあはれ」を
表現することを目的に書かれたものである。

・「もののあはれ」とは見聞きしたものに
対して様々な感情を抱き、心が動くこと。

・『源氏物語』を教訓のための書として
解釈してはいけない。

・『源氏物語』における善悪の基準は
「もののあはれ」の有無である。

・恋愛は最も「もののあはれ」が深い感情だ。

・不倫は恋愛の中でも「もののあはれ」が深い。

【参考記事】

以下の記事では、「もののあはれ」の意味や
「もののあはれ論」の内容を、よりやさしく解説しています。

補足(『源氏物語玉の小櫛』の記述)

9.『源氏物語』は教訓の物語ではない
「源氏物語は好色の心を助長する」
のあたりに相当する
『源氏物語玉の小櫛』の記述には、
次のような一節があります。

【原文】
なほいはば、儒仏の教へとは趣き変りてこそあれ、物の哀れを知るといふことをおし広めなば、身を修め、家をも国をも治むべき道にもわたりぬべきなり。人の親の子を思ふ心しわざを哀れと思ひ知らば、不孝の子は世にあるまじく、民のいたつき・奴のつとめを哀れと思ひ知らむには、世に不仁の君はあるまじきを、不仁なる君・不孝なる子も世にあるは、いひもてゆけば、物の哀れを知らねばぞかし。されば物語は物の哀れを見せたる書ぞといふことを悟りて、それを旨として見る時は、おのづから教戒になるべきことは、万にわたりて多かるべきを、始めより教戒の書ぞと心得て見たらむには、中々の物ぞこなひぞありぬべき。

【現代語訳】
(物語は決して教訓の書物ではないのだが)さらに言うならば、儒教・仏教の教えとは趣旨が違ってはいるが、もののあはれを知るということを押し広げていくと、身の行いを正し、家や国を治める道にも通じるはずである。(物語を読むことによって)親が子を思う感情をしみじみと思い知ると、親不孝の子どもはこの世にいるはずがなく、庶民の労苦や下僕の任務をしみじみと思い知ると、この世に慈愛の気持ちのない君主はいないはずである。それなのに、慈愛のない君主・親不孝な子が世の中にいるのは、せんじ詰めれば、もののあはれを知らないからであるよ。であれば、物語はもののあはれを見せた書物だということを理解して、それを主旨として読む時は、自然と教訓となるはずのことは多いであろうが、最初から教訓と書物だと思って読むようなのは、かえって誤解があるはずだ。

『源氏物語玉の小櫛』より引用

要するに、
人は「もののあはれ」を知ることによって
他人を思いやる気持ちが身に付き、
他人に優しくできる

ということです。

これは物語の社会的効用を説くものであり、
本居宣長独特の道徳論となっており、
『紫文要領』には見られない考え方です。

『源氏物語玉の小櫛』が松平廉定という
大名の勧めによって執筆され、
おそらく松平廉定に献上された
であろう書物であるために、
追記された箇所であろうと考えられています。

※「もののあはれの論」を含む
『源氏物語玉の小櫛』第一巻及び第二巻は、
『紫文要領』の改訂版となっており、
内容が一部異なります。

この記事では、『紫文要領』の「もののあはれ」論
の原文・現代語訳・要約を紹介しました。
ぜひ要約だけではなく、現代語訳のページも読んでみてください!

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