


この記事では、『源氏物語』のジャンルは、
歌物語なのか、作り物語なのか
詳しく解説します。
・『源氏物語』のジャンル
・『源氏物語』と同じジャンルの作品
・歌物語、作り物語の歴史
ぜひ最後までお読みください😊
源氏物語のジャンルは何?



源氏物語は作り物語か?歌物語か?
『源氏物語』のジャンルは、
大きな枠でいうと物語です。
さらに細かくいうと、作り物語に分類されます。



平安時代における物語のジャンルの一つ。
散文で書かれ、虚構性・伝奇性が強く、
王朝を舞台とした物語のこと。
平安時代における物語のジャンルの一つ。
私歌集などに収録されている
和歌にまつわる短編物語を集めたもの。



『源氏物語』は、主に散文で書かれた
虚構性の強い物語なので、
「作り物語」に分類されます。
ただし、『源氏物語』はさまざまな文芸作品の
影響を受けて成立しています。
貴種流離譚や三輪山伝説などの古伝承をはじめ、
『伊勢物語』のような歌物語、
『竹取物語』『宇津保物語』などの作り物語や、
ほぼ同時代に成立した『蜻蛉日記』などの
要素をとりこみながら、
独自の世界観や展開を構築し、
『源氏物語』は古代における作り物語の
頂点ともいえる存在となりました。









歌物語というものは、
最初に私歌集などの和歌があって、
その和歌をめぐって物語を作ったものです。
『源氏物語』は最初に和歌があったわけではなく
物語の一部として、登場人物の心理や人格を
表現するための技法として和歌を含んでいるものです。
だから、紫式部が一から創作した
『源氏物語』は、
歌物語の影響は受けているけれど、
成立過程がまったく異なっており、
あくまで作り物語のジャンルに分類されています。


源氏物語のジャンル(日本十進分類法<NDC>)



図書館における源氏物語のジャンル
現代において日本の図書館で広く使われている
日本十進分類法(NDC)では、
『源氏物語』は913
(文学>日本文学>小説、物語)
のジャンルに分類されています。



日本十進分類法は、分類記号に「0」から「9」の
アラビア数字を使って区分されています。
最も大きな一次区分は、以下のように分類されています。
| 類目表(第1次区分表) |
|---|
| 0 総記 |
| 1 哲学・宗教 |
| 2 歴史・地理 |
| 3 社会科学 |
| 4 自然科学 |
| 5 技術、家庭、工業 |
| 6 産業 |
| 7 芸術、体育 |
| 8 言語 |
| 9 文学 |
『源氏物語』は文学作品なので、
「9 文学」の区分に
分類されますが、さらに二次区分に細分化されます。
「9 文学」の二次区分は以下のようになっています。
| 綱目表(第2次区分表) |
|---|
| 90 文学 |
| 91 日本文学 |
| 92 中国文学、その他の東洋文学 |
| 93 英米文学 |
| 94 ドイツ文学、その他のゲルマン文学 |
| 95 フランス文学、プロバンス文学 |
| 96 スペイン文学、ポルトガル文学 |
| 97 イタリア文学、その他のロマンス文学 |
| 98 ロシア・ソビエト文学、その他のスラブ文学 |
| 99 その他の諸言語文学 |
『源氏物語』は日本人の書いた文学ですので、
「91 日本文学」に該当します。
「91」はさらに三次区分に細分化されます。
| 要目表(第3次区分表) |
|---|
| 910 日本文学 |
| 911 詩歌 |
| 912 戯曲 |
| 913 小説、物語 |
| 914 評論、エッセイ、随筆 |
| 915 日記、書簡、紀行 |
| 916 記録、手記、ルポルタージュ |
| 917 箴言、アフォリズム、寸言 |
| 918 作品集 |
| 919 漢詩文、日本漢文学 |
『源氏物語』は、物語なので、
「913 小説、物語」の区分に分類されます。
実際に、国立国会図書館のHPから、
『源氏物語』が913に分類されているかどうか
確認してみましょう。
岩波文庫の『源氏物語』は、913.36に分類されていますね。


瀬戸内寂聴訳の『源氏物語』も、913.6です。


『伊勢物語』も同じ913に分類されています。
日本十進分類法には、
作り物語と歌物語のジャンルが
ないので、『源氏物語』も『伊勢物語』も
同じ「物語」のジャンルとなっています。
『枕草子』は随筆なので、914です。
『蜻蛉日記』は日記なので、915です。
日本十進分類法(NDC)では、
『源氏物語』は「小説、物語」の
ジャンルに分類されている。
源氏物語は、小説?物語?



そもそも、小説には明確は定義はありません。
あえて言うとしたら、
小説とは、主に近代~現代文学に対して
いわれる名称であり、
作者の構想をもとに作中の事件・人物を通して
人間の姿や社会の姿を描き出す
虚構のお話のことを指します。
対して、物語は、
主に古典文学に対していわれる名称であり、
作者の見聞や想像をもとに書かれた
散文の作品のことです。
一般的には近現代の小説に比べて物語は、
構想が甘く、心理描写も乏しいとされています。
しかし、『源氏物語』は、
平安時代に書かれた作品でありながら、
近現代の心理小説に匹敵する描写が見られ、
人間のありのままの姿が巧みに
描き出されていることから、
あえて「小説」というジャンルで語られる
場合があるのです。






源氏物語と同じジャンルの作品



『源氏物語』以前に成立した作り物語で
現存するのは、
『竹取物語』『宇津保物語』『落窪物語』です。
『源氏物語』以降に成立した作り物語は、
『浜松中納言物語』『狭衣物語』
『とりかへばや物語』『夜半の寝覚』が
現存しています。
鎌倉時代に入ると、
『住吉物語』『石清水物語』『松浦宮物語』
『山路の露』などの物語が制作されます。
これらは、虚構性の強い作り物語の内容ですが、
『源氏物語』など平安時代の物語を模倣した、
平安時代を舞台とする物語なので、
擬古物語という呼び方をされています。
鎌倉時代から室町時代にかけて
擬古物語が盛んに創作されました。





歌物語/作り物語の歴史
最後に、
平安時代おいて、歌物語と作り物語が
成立するまでの歴史を簡単に説明します。
古伝承から物語への進化
古代(古墳時代~奈良時代)において、日本では
『古事記』『日本書紀』『風土記』などに
見られるような古伝承が語られていました。
古伝承とは、昔話として神話や歴史を
語るものであり、古代においては
宮廷や地方の語部によって伝えられていました。
平安時代に入ると、
物語が制作されるようになっていきます。
物語が書かれるようになった背景として
平仮名の成立が指摘されています。
平仮名によって日本語を
表記できるようになったことで、
漢文の表現や権威から解き放たれ、
日本語により自由な物語文学が成立したのです。
要するに、平安時代に書かれた物語とは、
漢文および古伝承から解放され、
型にはまらない、私的で自由な語りであるということです。
昔話や漢文から離れ、類型を超えて
テーマを見つけるのが物語であるともいえます。


歌語りから歌物語へ
平安時代になり、10世紀になると、
歌物語が成立しますが、
歌物語の成立過程には、歌語りという文化が存在しました。
おそらく9世紀頃から人々の間では、
歌語りが行われていたと
国文学者の藤井貞和氏は推測しています。
歌語りとは、意味ありげな和歌があると、
それを巡ってお話を作ってみて
語るものです。
実話に似せたお話や、
奇抜で面白い話を作ってみて、
笑ったり、泣いたりしていました。
歌語りは当時の貴族たちの楽しみで
あったことでしょう。
10世紀になって作られた歌物語とは、
歌語りが行われていて、
まだ作り物語が発達していない平安前期に、
慰み物として流行っていた歌語りを、
かな文字によって集成したものです。
『伊勢物語』『平中物語』『大和物語』などが
歌物語として分類されています。
作り物語の成立
歌物語の成立と同時期
(9世紀後半~10世紀前半)に、
『竹取物語』が書かれています。
『竹取物語』は、現存する中では
日本で最初の作り物語です。



『竹取物語』は
『万葉集』に見られる竹取説話や
『風土記』に見られる羽衣伝説などの
古伝承をとりこみながら、
中国の神仙思想の影響を受けて成立しました。
類型化された要素を多く含んでいるにも関わらず、
人間の真実の姿を描いたところが画期的でした。
10世紀の間には、他にも多くの作り物語が
創作されましたが、内容はほとんど現存しておらず
約30編のタイトルが伝わっています。



これらの散逸物語の多くは
短編であったようですが、
中には連作的な方向に進み、
長編物語をこの世に生みだす
動力になっていったと考えられます。
そうした長編化の流れの中で、
『宇津保物語』(10世紀後半)という
長編物語が生まれ
中長編である『落窪物語』(10世紀末)が
後に続きます。
そして、
ついに11世紀初めに作り物語の最高峰である
長編物語『源氏物語』が誕生するのです。
作り物語の最高峰『源氏物語』の成立
『源氏物語』は作り物語の最高峰といわれますが、
「作り物語」というジャンルに
完全に閉じ込められているわけではありません。
前述した通り、
『源氏物語』の作品中には、
795首もの和歌が出現しており、
歌物語の影響を見ることができるし、
三輪山伝説や貴種流離譚などの古伝承も抱え込んでいます。
『竹取物語』の大きな影響も読み取れます。
ほぼ同時期に成立した『蜻蛉日記』の
人間描写の影響を受けているとも言われています。
『源氏物語』は、既存の作り物語、
日記、歌物語、古伝承など、
さまざまなジャンルの書物の影響を
受けて成立したものなのです。
歌物語も、完全に孤立した分野
というわけではありません。
歌語り群として多くのメモがされていたのを、
編集する人がいて、
作り物語の体裁に整えていったのだから、
歌物語といっても作り物語と無関係というわけではないのです。
作り物語、歌物語、日記、随筆…
多くの日本文学史はこれらをジャンルごとに
紹介していますが、
同時代の大きな文学的流れの中に、
ジャンルを超えて相互に影響し合っているのです。
ひらがなの成立と和歌 ★補足
物語の発展には、ひらがなの成立の影響が
大きいと前述しましたが、
藤井氏は、ひらがなは、9世紀頃に
和歌をメモするために発達していったのでは
ないかと推測しています。
歌を口頭でやりとりしていた時代に、
人々は和歌をひらがなでメモしていて、
不要になれば廃棄していたのでしょう。
8世紀の終わりから100年間、
和歌は全く本として残っていないのは、
和歌が口頭でやりとりするものであったから、
書き留めたメモがほとんど廃棄されていた
からなのかも知れません。
そして、ひらがなが成立した結果、
自由な日本語表記が可能となり、
平安時代において
歌物語、作り物語、日記、随筆などの
王朝文学が花開いていったのです。
※物語の歴史については、藤井貞和氏の著書を
参考にさせていただきました。
この記事では、『源氏物語』のジャンルや
作り物語、歌物語の成立について詳しく解説しました。
当ブログでは、他にも『源氏物語』について
様々な角度から記事を制作しています。
よろしければ、他の記事も読んでみてくださいね!















