可憐な外見で、従順な性格の夕顔は、
貴公子・光源氏を夢中にさせる不思議な魅力がありました。
夕顔は、『源氏物語』の中では
「夕顔」の巻でしか登場しません。
しかし、その悲劇的な最期は印象的で
源氏物語ファンからの人気も高い女君です。
この記事では、夕顔について
わかりやすく詳しく解説していきます。
・夕顔がどんな人だったか
⇒相関図つき人間関係
⇒性格・容姿・身分・年齢
・夕顔の巻のあらすじ紹介
・夕顔の死因の解説
⇒物の怪の正体について
・夕顔が人気の理由を解説
・夕顔と浮舟が似ていると言われる理由
長い記事になりましたので、
以下のタップできる目次で
読みたいところからお読みください!
源氏物語の夕顔ってどんな人?人間関係や性格など特徴を解説
まずは夕顔の人間関係を
家系図つきでわかりやすく解説しますね。
夕顔の人間関係を解説(相関図つき)
以下の源氏物語第一部全体の
相関図をご覧ください。
赤枠で囲った部分が夕顔と関係の深い人物です。
夕顔、頭中将、光源氏の
関係性の時系列は下記のようになります。
頭中将がまだ少将だった頃、
夕顔と恋に落ちて、一人娘(玉鬘)が
生まれます。
正妻の父・右大臣から、
嫌がらせを受け、恐れた夕顔は
西の京の乳母の元に身を隠します。
頭中将と音信不通に。
<頭中将との仲は3年ほど続いていた>
頭中将と会わなくなってから
1年ほどたった頃に
光源氏が通うようになる。
上記の系図では、スペースの関係で
夕顔と光源氏との恋人関係の線がひけませんでした。
夕顔にクローズアップした関係図はこちらです。
人物 | 人物の解説 |
---|---|
夕顔 | 源氏の乳母の家の隣家の女主人。 かつて頭中将と恋人関係だった。 「夕顔」の巻で光源氏と恋愛をする。 |
光源氏 | 乳母のお見舞いに五条を訪問した時に 夕顔と出会い、恋愛関係となる。 |
頭中将 | 光源氏の友人でありライバル。 左大臣の息子であり、 右大臣の娘を正妻としている。 夕顔と恋仲になり、玉鬘が生まれる。 |
右大臣 | 頭中将の正妻の父。 光源氏とは政敵の関係にある。 |
三位中将 | 夕顔の父親。既に死去しており 物語の中では名前しか出てこない。 |
右近 | 夕顔に仕える女房。 夕顔の乳母の娘であり、幼い頃から一緒に育った。 そのまま夕顔に仕えるようになった。 |
玉鬘 | 頭中将と夕顔の娘。 後に光源氏の養女となる。 |
葵の上 | 光源氏の正妻。 |
六条御息所 | 光源氏の愛人。 夕顔の巻に六条御息所との逢瀬のシーンが登場。 生霊となり夕顔にとりつき死に追いやる。 |
\夕顔の娘・玉鬘の紹介記事/
夕顔の周辺の人間関係は
これで整理できましたね。
夕顔の性格
夕顔の性格を簡単にまとめると…
・気弱で頼りない。
・素直で従順。
・おっとりしている。
・世間知らずで可愛らしい。
・交際した男性の色に染まるタイプ。
夕顔のこれらの性格的な特徴が
わかる文章を紹介していきますね。
以下は、
光源氏が夕顔のもとに
通い始めた当初の記載です。
【原文】
源氏物語「夕顔」より引用
人のけはひ、いとあさましくやはらかにおほどきて、 もの深く重き方はおくれて、 ひたぶるに若びたるものから、世をまだ知らぬにもあらず。 いとやむごとなきにはあるまじ、 いづくにいとかうしもとまる心ぞ、と返す返す思す。
【現代語訳】
女の雰囲気は、驚くほど従順でおっとりとしていて、深味や慎重さは少なくて、とにかく若々しいようでいながら、男女の仲を知らないわけでもない。たいして高貴な身分ではないだろうに、どこにこうまで心が惹かれるのだろうか、と繰り返し光源氏はお思いになる。
- 従順でおっとりしている
- 思慮深さや慎重さは少なく若々しい
- 何も知らないようで男女の仲は知っている
光源氏は夕顔の
ふわふわした雰囲気にハマり、
昼間の会えない時間にも
会いたくてたまらないという状態に
陥ってしまったのです。
また、次のような記載も注目されます。
【原文】
源氏物語「夕顔」より引用
のどかに、つらきも憂きもかたはらいたきことも、 思ひ入れたるさまならで、 我がもてなしありさまは、いとあてはかにこめかしくて、またなくらうがはしき隣の用意なさを、 いかなる事とも聞き知りたるさまならねば、なかなか、恥ぢかかやかむよりは、 罪許されてぞ見えける。
【現代語訳】
(夕顔は)のんびりとしていて、辛いことも苦しいこと恥ずかしいことも、気にしている様子ではなく、態度はとても貴族の子らしく、娘っぽくて、またとないくらい下賤な隣家の会話を、全くわかっていない様子なので、逆に恥ずかしがるよりは、罪がないように(光源氏には)思われるのであった。
夕顔は、貴族の子でありながら
落ちぶれて貧しい雰囲気の家に
住んでいましたが、
そのことを恥じ入ったり、
辛いと思っている様子を光源氏に見せませんでした。
- のんびり屋で細かいことは気にしない性格
- 若々しく子供っぽい
- 世間をあまり知らない
夕顔は「若々しさ」「従順さ」が
強調されたキャラクターでした。
光源氏は、
夕顔のようなおっとりした女性を教育して
自分の思い通りに染め上げたいという
願望を持ってました。
ただし、
「もう少し才気があればいいのにな」
と夕顔に対して少し不満も感じていたようです。
夕顔は、あまりにも
のんびり、おっとりとした可憐な性格の女性だったのです。
夕顔の容姿は美人だった?
夕顔は、
儚い雰囲気で、可愛い容姿をしていたようですが、
詳細な容貌は語られていません。
夕顔の容姿に関わる文章を
『源氏物語』から引用してみましょう。
【原文】
源氏物語「夕顔」より引用
文書くとてゐてはべりし人の、 顔こそいとよくはべりしか。
【現代語訳】
手紙を書こうとして座っていた女性の顔が、とてもきれいでございました。
【原文】
源氏物語「夕顔」より引用
容貌なむ、ほのかなれど、 いとらうたげにはべる。
【現代語訳】
(夕顔の)容貌は、はっきりとは見えませんが、とてもかわいらしげでございます。
以上の二例は光源氏の従者・惟光が
覗き見して、光源氏に報告したときの記載です。
容姿の可愛らしさが報告されました。
以下は八月十五日夜の逢瀬の中での記載です。
【原文】
源氏物語「夕顔」より引用
白き袷、薄色のなよよかなるを重ねて、はなやかならぬ姿、いとらうたげにあえかなる心地して、そこと取り立ててすぐれたることもなけれど、細やかにたをたをとして、ものうち言ひたるけはひ、「 あな、心苦し」と、ただいとらうたく見ゆ。
【現代語訳】
(夕顔は)白い袷(あわせ)、薄紫色の柔らかい衣を重ね着にして、地味な姿は、大変かわいらしく儚い感じがして、取り立てて優れた所はないが、華奢でしなやかな雰囲気で、何か少ししゃべる様子は、「ああ、いじらしい」と、ただただ可愛いと(光源氏は)思われる。
かなり詳しく描写されていますが、
この時点では、夕顔はまだ光源氏に対して
顔を隠していたので、姿のみの描写となります。
いいえ、なにがしの院に移ってから、
光源氏は夕顔の顔を初めて見ます。
「ただ打ち解けていく様子が可愛らしい」と
様子に関する描写が見られるのみです。
夕顔が亡くなってから、
光源氏は遺体にお別れを告げますが、
その際の容姿の描写も、非常に抽象的です。
【原文】
源氏物語「夕顔」より引用
恐ろしきけもおぼえず、いとらうたげなるさまして、まだいささか変りたるところなし。
【現代語訳】
(夕顔は)気味悪さも感じられず、大変かわいらしい様子をして、まだ少しも変わった所がない。
亡骸になってもなお、夕顔は可愛らしい容貌をしていました。
夕顔は、容姿の美しさよりも、
性格の従順さや雰囲気の可憐さのほうが
強調されていることがわかりますね。
いいえ、源氏物語では、
不美人の容姿は詳細に語られますが、
美女の容貌は詳しく書かれないことが多いのです。
後の「玉鬘」の巻にて
夕顔の娘の玉鬘の顔が
「母君に似て目元が美しい」という
表現もあることから、夕顔は美人だったのでしょう。
読者はその様子や光源氏の態度から、
夕顔の美貌の詳細を想像するしかありませんね。
夕顔の身分は低かった?
夕顔の父親は三位中将でした。
三位中将とは上達部であり、とても高貴な身分です。
貴族の中でも三位以上の者と
4位の参議(特殊な政務を担った重職)を
上達部と呼び、別名は「公卿」です。
上達部は公卿会議に出席することができ、
朝廷の政治に関わることができました。
三位中将の娘、
夕顔は高貴な身分だったと言えます。
両親は早くして亡くなり、
夕顔には後ろ盾がなくなってしまいました。
頭中将と恋愛関係になりますが、
正妻の父・右大臣におどされた夕顔は、
五条の小さな家に隠れて住んでいたのです。
「帚木」の巻で、
女性は上の品、中の品、下の品の
3階級に分けられると語られており、
「元は高貴な家筋でも、時勢に押し流され
落ちぶれてしまった場合は中の品だ」
と定義づけられています。
夕顔は、落ちぶれた貴族なので、
いわゆる中の品ということになります。
夕顔は何歳だった?源氏との年齢差は?
夕顔は、19歳。
光源氏より2歳年上の女性でした。
夕顔が亡くなった後に、
光源氏が右近から聞き出しています。
光源氏と出会った&
亡くなった年齢が19歳。
頭中将との娘を出産したのは17歳の春。
頭中将と関係があったのは、15歳~18歳頃のことです。
源氏物語の夕顔のあらすじをわかりやすく紹介!
夕顔は、
『源氏物語』の「夕顔」の巻にのみ
登場する女君です。
ここでは、
「夕顔」の巻の
夕顔に関するエピソードのあらすじを
分かりやすくまとめました。
\源氏物語全体のあらすじはこちら/
夕顔の巻のあらすじ
夕顔と光源氏の出会い 夏の物語
夏のもっとも暑い6月頃のお話です。
源氏の乳母の一人である「大弐の乳母」が
病気になり、出家して尼になっていたので、
光源氏は五条にある尼の家を見舞いに訪ねました。
乳母の家の隣には小さな家が建っており、
高窓の簾から美しい女が
たくさん額を並べてこちらを見ていました。
その家の垣根には
白い夕顔の花が咲いており、
光源氏は花に興味を持ちます。
小さな家から
かわいらしい女童が出てきて
扇の上に夕顔の花を載せて光源氏に献上します。
光源氏と隣家の女主人とは
和歌の遣り取りをします。
この隣家の女主人が、夕顔です。
後に光源氏と恋仲になっていきます。
乳母へのお見舞いが終わると、
光源氏は「隣の家に住んでいるのは誰か」と
従者の惟光に質問をしました。
惟光は管理者に問い合わせをし、
「揚名介という人の家だが、
男は地方に下向していて、
その妻の姉妹が出入りしている」
と報告します。
光源氏は、
隣家の女に興味を持ちながら、
自邸へと帰っていくのでした。
夕顔についての報告がくる
数日後、
従者の惟光は、光源氏に
先日の隣家の女についての調査結果を報告をします。
- 5月頃から内密にあの家に住んでいる。
- 女主人の顔はとても綺麗だった。
- 物思いに沈んでいる様子だった。
と報告を受け、
光源氏はますます興味をかきたてられます。
夕顔と光源氏、深い仲になる
その後も惟光に夕顔についての調査を続けさせます。
光源氏の友人の頭中将と
夕顔が昔、恋人関係だったことを知り、
源氏はよりいっそう夕顔に興味を持ちます。
惟光が苦労して手引きをした末に
光源氏は夕顔のもとに通うようになります。
夕顔が身元を明かさないので、
光源氏も自分の身分を相手に明かさずに
通っていました。
夕顔は、相手の身元を確認しようと
追跡させますが、いつもまかれてしまって
正体をつきとめられませんでした。
八月十五夜の逢瀬
八月十五日、満月の夜。
光源氏は、自邸の二条院に
夕顔を迎えようと思いつきます。
その前に、誰にも邪魔されないところで
ゆっくり語り合いたいと企画します。
夜明けが近づいて、
近所の家々の労働や勤行の物音を聞きながら
二人は愛を語り合うのでした。
なにがしの院に移る
明け方になり、
二人はなにがしの院に移ります。
源融が建造した河原院がモデルとされる。
六条にあり、この時代は人が住んでいなかった。
二人は日が高くなってから起きて
のんびり愛を語らないながら日中を過ごします。
光源氏は、この時、
初めて夕顔の顔を見たのです。
夕日に照らされた顔をお互いに
見かわしながら、
夕顔は光源氏に対して心を開いていきました。
光源氏は、つい
気位の高すぎる六条御息所と
夕顔の従順な可愛らしい性格を比較してしまうのでした。
夕顔 | 六条御息所 | |
---|---|---|
容姿 | なよなよとして華奢で可憐な様子。 可愛らしい雰囲気。 | 気品のある優雅な美しさ。 |
性格 | おっとりしていて従順。 男好きのする頼りない性格。 | 教養に優れ、プライドが高い。 男に気を許さず、物事を思いこんでしまう性格。 |
夜半、もののけが現われる
十時過ぎに、少し寝入った頃、
光源氏は枕元に美しい女が座っていて
夕顔に手を伸ばして起こそうとする光景を夢に見ました。
目を覚ますと、灯りは消えてしまっていて、
夕顔は怖がってぶるぶる震え、
汗もびっしょりかいていました。
光源氏は人を呼び、弓を鳴らさせます。
部屋に戻ると、
夕顔はすでに息をひきとっていました。
光源氏と女房の右近は夕顔の死を
悲しみ、茫然とした状態となります。
光源氏は、なにがしの院に来たことを
強く後悔するのでした。
光源氏、二条院に帰る
従者の惟光が
なにがしの院に到着します。
夕顔の遺体を運び出して、
知人の女房が尼になって住んでいる
東山に安置することを提案します。
夕顔の遺体と右近を馬に乗せて
惟光が東山に連れていきます。
光源氏は自邸の二条院に戻りました。
光源氏は夕顔のことを思うと胸が苦しく、
頭痛・発熱などの症状が出ます。
夕顔と昔恋人関係だった頭中将が
お見舞いに来ますが、
光源氏は本当のことを言えず、ごまかします。
夕顔の葬送
夕顔の葬儀を行うことになりました。
8月17日の夜、光源氏は
夕顔の遺体を最後に一度見るために出かけます。
夕顔の可愛らしい遺骸を見て、
光源氏は手をにぎって、泣いたのでした。
二条院に戻った光源氏は
あまりの悲しみに衰弱していきます。
夕顔の女房・右近を二条院に呼び寄せて
部屋を与え、仕えさせます。
20日ほど光源氏は重体でしたが、体調が回復。
忌も明けたので、宮中に参内するのでした。
忌明け後、夕顔の素性と過去を知る。
9月20日頃、忌みは明け、
光源氏の体調もすっかり回復しました。
光源氏は右近を近くに呼び、
夕顔の素性を聞き出します。
- 夕顔の両親は早くに亡くなった。
- 父親は三位中将
- 頭中将が以前、夕顔と愛人関係だった。
- 一昨年の春に娘が生まれた。
- 昨年秋、頭中将の妻の父、右大臣から嫌がらせがあり、
五条の賤しい家に引っ越してきていた。
光源氏は、夕顔と頭中将の娘を
自分に育てさせてほしいと申し出るが
うやむやにされてしまいました。
夕顔の四十九日法要
夕顔の四十九日の法要は、
比叡山の法華堂でとりおこなわれました。
夕顔の家では、
仕える女たちが夕顔が行方不明になったと
心配をしていました。
光源氏は夕顔の娘(玉鬘)のことを
気にしていましたが、
夕顔との関係を公にもできないので、
積極的に探すこともできず、娘は消息不明になっていきます。
夕顔の物語は、
あさきゆめみし新装版の1巻(其の三)
に収録されています。
夕顔の娘・玉鬘は、後に登場します。
玉鬘のエピソードはこちらの記事で紹介しました。
夕顔の詠んだ和歌を紹介
夕顔が詠んだ和歌の中で
もっとも有名なものを紹介しましょう。
次の和歌は、
夕顔が扇に記して、
初めて光源氏に贈った和歌です。
心あてに
それかとぞ見る白露の
光そへたる
夕顔の花
【意味】
もしやあなた様ではないかと思います。
白露の光を添えて美しい夕顔の花は。
この和歌の解釈には諸説あります。
解釈1:白露の光=光源氏とする説
「白露の光」を光源氏のことを指しているとして、
「あなたは光源氏様ではないですか?」と
問う意味であるとする解釈です。
光源氏は世間の人々から「光る君」と
呼ばれ、その存在が知れ渡っていました。
夕顔は、美しい男性の姿を見て
「あの方は、きっと光源氏さまだ」と
推測したのかも知れませんね。
解釈2:白露の光=頭中将とする説
「白露の光」を頭中将のことを指しているとして、
「あなたは頭中将様ではないですか?」と
問う意味であるとする解釈です。
夕顔は過去に頭中将と、
3年ほど愛人関係だったので
このような解釈も可能ですね。
夕顔の死因は何だったの?
なにがしの院での物の怪事件
夕顔は、なにがしの院で急死します。
夕顔と寝ているときに、
光源氏は、美しい女が枕元に座って、
恨み言を言いながら夕顔のほうに手を伸ばすという夢を見ます。
その夢から覚めると、
夕顔の体調は急変していたのです。
震え、汗、意識混濁
などの症状が見られました。
【原文】
「源氏物語」夕顔の巻より引用
この女君、いみじくわななきまどひて、 いかさまにせむと思へり。汗もしとどになりて、我かの気色なり。
【現代語訳】
この女君(夕顔)は、ひどく震え、おびえて、どうしたらいいか分からない状態だった。汗もびっしょりで、意識のあるなしも疑わしい。
光源氏が人を呼びに部屋の外へ出て、
また戻ってきたときには、
すでに夕顔は息をひきとっていたのです。
夕顔は、物の怪に襲われたことにより
死亡しました。
物の怪の正体は誰?
物の怪の正体については
2つの説があります。
六条御息所説
まず最も一般的なのは、
物の怪の正体を六条御息所の生霊とする説です。
夕顔の巻には光源氏の気持ちが
六条御息所から離れているという挿話が書かれています。
【原文】
「源氏物語」夕顔の巻より引用
六条わたりにも、 とけがたかりし御気色を おもむけ聞こえたまひて後、ひき返し、なのめならむは いとほしかし。されど、よそなりし御心惑ひのやうに、あながちなる事はなきも、 いかなることにかと見えたり。
【現代語訳】
(光源氏は)六条御息所に対しても、その恋を遂げ閉まってからは、うって変わって、通り一遍なお扱いなのは気の毒である。けれど、他人でいたころのご執心のように、強引なところがないのも、どうしたことかと思われた。
六条御息所は、光源氏が自分を避けていることを
夜な夜な悩み悲しんでいたのです。
このような記載は、
自分より愛されている夕顔を恨み、
六条御息所が生霊として現れる
伏線としてとらえることができます。
\六条御息所の解説はこちら/
邸に住みついた物の怪説
ところが、
源氏物語の原文には
物の怪が六条御息所であるという記載は一切ありません。
光源氏は物の怪について以下のように分析しています。
【原文】
「源氏物語」夕顔の巻より引用
荒れたりし所に住みけむ物の、我に見入れけむたよりに、かくなりぬること
【現代語訳】
荒れ果てた邸に住んでいた物の怪が、私にとりついたことで、こんなことになったのだ。
原文にこのように書いてあることから、
夕顔を襲った物の怪は、六条御息所ではなく、
なにがしの院の物の怪だとする説があります。
なにがしの院は、
平安時代の初期に
源融が築いた「河原院」がモデルと言われています。
『江談抄』という説話集にも、
宇多天皇が京極御息所と河原院で寝ていると、
源融の霊に襲われて御息所がぐったりしてしまった…
という話が収録されています。
紫式部は、そのような伝説を参考にして
夕顔のエピソードを書いたのかも知れませんね。
夕顔と死因となったのは物の怪。
物の怪の正体については2つの説がある。
①六条御息所説、
②なにがしの院に住む物の怪(源融の霊?)説
夕顔が人気の理由を解説!【魅力的な女性でした】
夕顔が人気を集めている理由
夕顔が好きという人は
SNSを見ていても多いです。
源氏物語は夕顔が好き
— 衣川龗 (@nakunamida_853) October 11, 2022
朧月夜はなんか好き
夕顔が人気を集めている理由としては、
やはりその性格の可愛らしさでしょう。
- おっとりと従順
- 素直
- 世間知らずで可愛い
- 気弱・内気で頼りない
源氏物語には、たくさんの女君が登場しますが、
夕顔は癒し系No.1なのです。
現代でもおっとり癒し系な女性は人気ですよね。
夕顔の魅力にとりつかれるのは光源氏だけではないようです。
夕顔さんは源氏物語で一番好きな女性です。
— 福少納言 (@oMoCHiuRa) August 16, 2015
理由はまあ端的に言うと恋愛の絶頂に死ぬところが好きです。憧れというか。
素直で素朴で可愛いイメージだし、源氏の心を当時誰よりも癒した存在だったんじゃないかな。
心あてにそれかとぞ見る白露の光添へたる夕顔の花
特別な思い入れがある歌です😎
夕顔を嫌いという人の声
夕顔を嫌いという人もいます。
源氏物語の夕顔めちゃめちゃ嫌いなタイプの女すぎて六条御息所が可愛く見えてきた
— はる (@mgmgchocomgmg) May 29, 2020
夕顔が嫌われる理由としては、
以下の点が考えられます。
- ぶりっ子に見える
- 自分の意志が無くてムカつく
ぶりっ子しているように見えるし、
男の意見に従ってばかりで
自分の意志が薄弱なのもイライラしてしまうのでしょう。
夕顔と浮舟の共通点とは
源氏物語第一部の前半に登場する夕顔と
源氏物語第三部宇治十帖に登場する浮舟。
この二人は全く接点もなければ、
血縁でもありませんが、
共通点が3つあります。
おっとりと可憐な美人である
夕顔も浮舟も
おっとりしていて可憐な美人であると
形容されています。
光源氏は夕顔に対して、
薫は浮舟に対して、
「もう少し才気があれば」と
不満を抱いていたところも同じです。
2人の男性から愛されたところ
夕顔は、頭中将と光源氏から、
浮舟は、薫と匂宮から愛されます。
2人の男性から愛されてしまうところが
夕顔と浮舟の共通点ですね。
自分で意思決定ができない
夕顔は若々しく従順で、
男性に従う性格でした。
浮舟も、従順な性格でした。
自己主張をせずに常に母親の
言いなりになって生きてきたのです。
やがて浮舟は、薫の愛人になりますが、
匂宮にも愛されてしまいます。
そこにも浮舟には意志がありませんでした。
浮舟は匂宮に心惹かれていきますが、
薫と匂宮の板挟みとなり、
自分はどうしたいか?
意思表示ができず、
唯一、自分で決められたことが
宇治川に入水することだったのです。
『源氏物語』全体の年表はこちらの記事で
紹介しています。
現代語訳に
まだチャレンジしていない方は、
こちらの記事を参考にして読んでみてくださいね😊
よくある質問
- 光源氏にとって夕顔はどんな存在ですか
-
光源氏は夕顔のおっとり従順で、
儚げな様子にベタ惚れでした。
単なる遊び相手ではなく、
いずれは自邸の二条院に住まわせて
正式に側室とするつもりでした。
(ですが、その前に夕顔は亡くなってしまうのです)
光源氏にとって、夕顔は大切な愛人だったのです。 - 光源氏と夕顔の関係は?
-
光源氏は葵の上を正妻としていたので、
光源氏と夕顔は愛人関係だったことになります。 - 夕顔は遊女だったのですか?
-
女童をつかって光源氏に声をかけたり、
従順で男好きのする性格であったり、
夕顔は遊女的な性質を持っていると指摘する人もいます。
しかし、源氏物語本文中には
夕顔が遊女であることの明確な根拠はありません。
夕顔は、三位中将という貴族の娘であり、
早くに両親を亡くして落ちぶれている
という経緯のみが語られています。