【源氏物語の本について】
・わかりやすい現代語訳
・高校生におすすめな本
・面白い本
をわかりやすく紹介しています。
さらに、源氏物語を現代語訳した人の一覧と
それぞれの比較についても記載しています。
この記事を読むことで、
自分がどの現代語訳を読めばよいか
わかるようになります✨
源氏物語のあらすじを知りたい方は、
こちらの記事が参考になります!
源氏物語の現代語訳 わかりやすい本を紹介!
源氏物語はこれまで多くの作家や学者が
現代語訳をしてきました。
その中でも、原文に忠実で
なおかつ初心者の方にもわかりやすく
現代語訳しているおすすめの作家さんを
2名紹介します。
角田光代
一人目は角田光代先生の現代語訳です。
角田光代訳の源氏物語の特徴は、
原文に忠実でありながら
会話文以外の敬語を排除して、
現代的に読みやすくしていることです。
角田光代さんの源氏物語、読了
— muromiyu (@muromiyu) July 1, 2020
「あさきゆめみし」から入り、田辺源氏、瀬戸内源氏と読んできましたが、角田さんもとても読みやすい現代語訳で楽しかったです。 pic.twitter.com/dmJC2JPN4D
下記は、女三の宮が柏木との不倫の子を
出産し、父の朱雀院を恋しく思う部分です。
原文と角田光代訳を並べてみました。
【「源氏物語」原文】
「源氏物語」柏木の巻より引用
山の帝は、めづらしき御こと平かなりと聞こし召して、あはれにゆかしう思ほすに、「かく悩みたまふよしのみあれば、いかにものしたまふべきにか」と、御行なひも乱れて思しけり。さばかり弱りたまへる人の、ものを聞こし召さで、日ごろ経たまへば、いと頼もしげなくなりたまひて、 年ごろ見たてまつらざりしほどよりも、 院のいと恋しくおぼえたまふを、「 またも見たてまつらずなりぬるにや」と、いたう泣いたまふ。
【角田光代訳】
角田光代訳「源氏物語」柏木より引用
山の帝(朱雀院)は、姫宮のはじめてのお産が無事にすんだと聞き、心から会いたいと思うのだが、こうしてずっと具合が悪いという知らせばかりなので、いったいどうなってしまうのかと仏前のお勤めも手に付かないほど心配している。姫宮も、こんなに弱っているのに何も食べずに幾日も過ごしているので、すっかり衰弱してしまい、これまで会わずにいた時より、ずっと院が恋しく思い出されるので、「もう二度とお目に掛かれなくなってしまうのだろうか」とひどく泣く。
原文に忠実ながら主語を適切に補い、
非常にわかりやすい平易な日本語で
現代語訳されていますね。
各巻の冒頭には相関図もついているので、
登場人物の関係性がわからなくなって
しまうこともありません。
ただし、瀬戸内寂聴訳と比較すると
一つ一つの段落が大きく、
文字がびっしり埋まっている印象があります。
河出書房新社 角田光代訳 源氏物語 上・中・下
お手頃価格の文庫本も発売されました。
(全8巻)
地の文は、「ですます調」ではなく
「だ・である調」で書かれていおり、
とても歯切れの良い文章となっています。
作品中に出てくる和歌も現代語訳
されているのも嬉しいですね。
(与謝野晶子訳は和歌の現代語訳がありません)
・「だ、である」調の文章
・現代的で自然、わかりやすい訳文
・地の文の敬語が排除されている
・原作に忠実である
・和歌の現代語訳もついている
・一つの段落が大きい
原文の忠実さとわかりやすさを重視し、
敬語表現が不要と感じる方には、
角田光代訳の「源氏物語」をおすすめします!
瀬戸内寂聴
瀬戸内寂聴先生の訳した
源氏物語もとても読みやすく
根強い人気があります。
瀬戸内寂聴訳の源氏物語の大きな特徴は、
中学生でも理解できるくらい平易な
日本語で訳されている点です。
それでいて、敬語を排除しておらず
「ですます調」で書かれているので、
文章が非常に雅やかで、美しく感じます。
わかりやすいように多少、加筆はされていますが、
ほぼ原作に忠実です。
下記は、女三の宮が柏木との不倫の子を
出産し、父の朱雀院を恋しく思う部分です。
原文と瀬戸内寂聴訳を並べてみました。
【「源氏物語」原文】
「源氏物語」柏木の巻より引用
山の帝は、めづらしき御こと平かなりと聞こし召して、あはれにゆかしう思ほすに、「かく悩みたまふよしのみあれば、いかにものしたまふべきにか」と、御行なひも乱れて思しけり。さばかり弱りたまへる人の、ものを聞こし召さで、日ごろ経たまへば、いと頼もしげなくなりたまひて、 年ごろ見たてまつらざりしほどよりも、 院のいと恋しくおぼえたまふを、「 またも見たてまつらずなりぬるにや」と、いたう泣いたまふ。
【瀬戸内寂聴訳】
瀬戸内寂聴訳「源氏物語」巻7より引用
山の朱雀院は、女三の宮のお産が無事に終わったとお聞きあそばして、しみじみいとしく、なつかしく、早くお会いしたいとお思いになりましたが、引きつづいてずっと御病気だということばかりが伝えられますので、どうなられることだろうかと、お勤めも怠りがちに御心配ばかりしていらっしゃいます。
あれほど衰弱していられた女三の宮が、何も召しあがらないまま幾日も過ぎていらっしゃるので、全く回復の望みもないように頼りなくなっておしまいになり、
「これまで長らくお目にかからなかった間よりも、五十の賀のお席で久々にお会いして以来のほうがずっと父院が恋しくてならないのは、もう二度とお目にかかれなくなってしまうからなのでしょうか」
とおっしゃって、たいそうお泣きになられます。
敬語表現を残している上に、
わかりやすいように言葉を補っているため、
全体的な文のボリュームが多いです。
しかし、角田光代訳と比較すると
段落が細かく分けられているので、
読みやすいと感じます。
瀬戸内寂聴さん。
— なでぃ (@my_nadi) November 11, 2021
なんだかずーっと生きていて下さるような気がしてた。
受験勉強中に古文で格闘した源氏物語、本当の扉は瀬戸内訳が開いてくれました。各巻末の「源氏のしおり」が好きです。岡本太郎と敏子の話を始め瀬戸内さんのように「愛」や「人間」を語れる人を他に知りません。
合掌。 pic.twitter.com/6CZuNGc2i2
巻末には人物相関図と語句解釈、
「源氏のしおり」という
簡単なあらすじと解説が添付していて、
初心者にもやさしいです。
他の人の現代語訳で挫折した人も、
瀬戸内寂聴訳なら読破できるかも知れません😊
講談社 瀬戸内寂聴訳 源氏物語 全十巻
10巻セット売りだと
お安く購入できます。
1巻ずつのバラ売りもあります。
初めて読んだ源氏物語が
瀬戸内寂聴訳だという方も多いのです。
もちろん和歌も現代語訳されており、
源氏物語の全体をしっかり把握することができます。
・敬語を残し「ですます調」で美しい文章。
・わかりやすい現代語訳。
・和歌の現代語訳もついている。
・原作に忠実に書かれている。
ちなみに源氏物語の副読本(解説書)
としておすすめなのは、
『よくわかる源氏物語』です。
漫画つきであらすじがわかりやすく解説
されており、相関図や豆知識、
興味深いコラムなどもついているので
初心者のみならず、より源氏物語を深く知りたい
人にもおすすめです😊
現代語訳を読むときに、
こちらの本を参考にしながら読むと
理解が深まりますよ!
源氏物語の現代語訳 面白いのはどれ?
「原文に忠実でなくてもいいから
源氏物語を面白く読みたい」
という人におすすめの本を2つ紹介します!
ここで紹介する本は
忠実な現代語訳ではなく、
源氏物語をテーマにした小説のような作品です。
瀬戸内寂聴「女人源氏物語」
瀬戸内寂聴先生の「女人源氏物語」は、
女君本人や、周囲にいる女房などの視点で
書かれた源氏物語です。
- 桐壺の更衣のかたる「桐壺」
- 侍女右近のかたる「夕顔」
- 紫の上のかたる「紫」
- 末摘花の侍女のかたる「末摘花」
など、源氏物語とは違った視点で、
語られているのです。
瀬戸内寂聴先生の源氏物語への深い理解
があるからこそ、できる技ですね。
視点を変えたために、
寂聴先生の主観や創作が入っており
非常に面白く読みやすいです。
女君の心理描写についても、
寂聴先生の主観、想像により
深く切り込んでいるので、
普通の現代語訳を読むよりも
わかりやすく感情移入しやすい作品となっています。
「女人源氏物語」の冒頭文は、
桐壺更衣が帝に語りかける形になっており、
他人の手紙を読む感覚でドキドキします。
恋しい主上(うえ)さま、おいとしい主上さま、お別れしてまだ半日と過ぎておりませんのに、もう幾十日も、いえ幾月もお別れしているような淋しい心細い気がしてなりません。
瀬戸内寂聴「女人源氏物語」桐壺更衣のかたる「桐壺」より引用
「女人源氏物語」は、
現代語訳ではありません。
源氏物語をテーマにした小説のような本です。
原文に忠実な作品ではありませんが、
源氏物語のストーリーや世界観を味わえるので
「気軽に面白い源氏物語を読みたい!」と
いう人に最適なのです。
短大生のとき源氏物語にハマり、色々な作家の源氏を読んだけど、いちばん面白かったのは瀬戸内寂聴さんの女人源氏物語①〜④だった。源氏物語に登場する女性目線で描かれたストーリー。 pic.twitter.com/0qkozyICfR
— 石澤真紀🦋 (@sr31srfuuka0915) January 12, 2024
・女性の登場人物の視点で語られている。
・寂聴氏の主観が多く入り、小説として面白い。
・寂聴氏の主観が多すぎるという意見もあり。
・平易な日本語
「決定版 女人源氏物語」は、
2023年~2024年刊行の新装版です。
(内容は、通常の女人源氏物語と同じ)
田辺聖子「私本・源氏物語」
「面白い源氏物語」と言えば、
田辺聖子先生の「私本・源氏物語」も有名です。
この本は原作に忠実な現代語訳ではなく、
源氏物語のパロディです。
光源氏がバリバリの関西弁で語り、
軽い文体の通俗小説のようになっており、
堅苦しくないです。
田辺聖子先生、あの戦争を生き抜いてくださいましてほんとうにありがとうございます。こんなにも面白い #源氏物語 のパロディ本を、私は他に存じ上げません…! #芋たこなんきん pic.twitter.com/HnVh29cP0i
— ひだかひみこ@あちこち不調! (@karunomiko) June 7, 2022
文藝春秋 「新装版 私本・源氏物語」
庶民感覚あふれる爆笑源氏物語です。
大変面白く、源氏物語のストーリーを
ストレスなく理解できるので
源氏物語の入門書としては良いです。
・源氏物語のパロディで面白い!
・登場人物が関西弁で語る。
・わかりやすい日本語。
源氏物語の現代語訳 高校生におすすめなのは?
中学生・高校生はまず、
大和和紀さんの書いた漫画の源氏物語
「あさきゆめみし」を読んでみましょう。
さぁ、皆の衆!今こそ大和和紀『あさきゆめみし』全13巻を入手するのよ!
— ☆★モチコ★☆ (@mochicco69) May 11, 2022
いちばん分かりやすくて、超絶美麗な『源氏物語』漫画版!
美しい源氏の君と取り巻く女達の妖しく艶やかで物哀しさもある恋物語。
表紙だけでこの華やかさ…一番好きなのは7巻の藤の花に囲まれた源氏と紫の上…永遠の名著✨ pic.twitter.com/rUquQ31Eu8
講談社 大和和紀「あさきゆめみし」完全版 全10巻
まずは、大和和紀さんの
美しいイラストで描かれた
漫画の源氏物語を読んで、
おおまかなストーリーと平安時代の世界観を
理解しましょう。
大和和紀さんは、源氏物語をしっかり
研究されており、ストーリーや
登場人物の心情など、
正確に読み取っておられます。
(もちろん脚色は多いですが)
ます漫画を読んでみるよ。
「あさきゆめみし」の後で
チャレンジしてほしいのが、
文字ばかりの現代語訳です。
おすすめの本は
- 角田光代訳の源氏物語
- 瀬戸内寂聴訳の源氏物語
です。
こちらで詳しく解説しました。
⇒源氏物語の現代語訳 わかりやすいのはどれ?
角田光代先生と瀬戸内寂聴先生
どちらの現代語訳も平易な日本語で
わかりやすく読みやすいです。
中学生や高校生でもチャレンジできる内容と
なっています。
ダイジェスト版の源氏物語も
瀬戸内寂聴先生の著作として、
ダイジェスト版の源氏物語もあります。
「瀬戸内寂聴の源氏物語」 (講談社文庫)です。
瀬戸内寂聴の源氏物語 #読了 しました。現代語で1冊に纏まってて、初めて読むには読みやすいです。やっぱり好きです源氏物語。 pic.twitter.com/Kp04jZgHcM
— komeko (@kome_0802) June 20, 2023
源氏物語は全54帖ですが、
この本では「桐壺」から「浮舟」まで、
真髄ともいえる27帖を厳選して抜き出し
現代語訳されています。
最初から現代語訳全文を読む
自信のない学生にはおすすめの
源氏物語入門書となっています。
源氏物語の登場人物はこちらの記事で
系図とともにまとめました!
現代語訳を読んでいて、
登場人物の関係性などわからなくなった
時は参考にしてくださいね。
源氏物語を現代語訳した人の一覧
過去に源氏物語の現代語訳をした人を
リストアップしてみました。
現代語訳した人 | 出版年 | 職業 |
---|---|---|
与謝野晶子 | 1912年(明治45年)2月~1913年(大正2年)11月 | 作家・歌人 |
谷崎潤一郎 | 1939年(昭和14年) | 作家 |
玉上琢弥 | 1964年(昭和39年)~1975年(昭和50年) | 国学者 |
円地文子 | 1973年(昭和48年) | 作家 |
田辺聖子 | 1978年(昭和53年)-1979年(昭和54年) | 作家 |
橋本治 | 1991年(平成3年)~1993年(平成5年) | 作家、評論家 |
瀬戸内寂聴 | 1996年(平成8年)~ 1998年(平成10年) | 作家 |
中井和子 | 2005年(平成17年) | 国学者 |
大塚ひかり | 2008年(平成20年)~2009年(平成21年) | エッセイスト |
林望 | 2010年3月(平成22年)~2013年6月(平成25年) | 作家 |
荻原規子 | 2013年8月(平成25年)~2017年4月(平成29年) | 作家 |
角田光代 | 2017年(平成29年)~2020年(令和2年) | 作家 |
たくさんの人が現代語訳していますね。
現代に近づくほど、読みやすい現代語訳が
増えてきます。
源氏物語の現代語訳の比較
源氏物語の現代語訳を
特徴ごとにグループに分けてみました。
物語を省略、再構築している
・荻原規子
・田辺聖子
荻原規子
荻原さんは物語を読みやすくするため、
源氏物語を3つの系統に分けて
再構築しています。
「紫の結び」は、
光源氏、藤壺の宮、紫の上が登場する
メインストーリーが一気に読めます。
桐壺の次に若紫を持ってくるなど、
中流女性との逢瀬や玉鬘系の巻をカットしているのです。
結果的に、とてもわかりやすく
読めるようになっているので
再構築されたものでよければ、
初心者におすすめですよ。
「つる花の結び」(中流女性・玉鬘系)
「宇治の結び」もあわせて読むと、
源氏物語の全体を理解できます。
田辺聖子
田辺聖子さんの源氏物語は、
冒頭で挫折する人が多いので、
桐壺・帚木をカットし、空蝉の帖から始まります。
敬語を省略している
・角田光代
・荻原規子
・林望
古典文学の中には敬語表現が多いため、
敬語を排除することにより
読みやすくなるというメリットがあります。
しかし、古典文学ならではの
優雅さが削がれたと感じる人もいるかも知れません。
林望氏の源氏物語は、
読みやすいと高評価をつける人も多いです。
少しさっぱりした文章に感じられるかも知れません。
加筆が多い
・橋本治
・円地文子
訳した人の想像(創造)により
読みやすく加筆が入っている現代語訳もあります。
円地文子
円地文子先生の現代語訳は、
創作で書き加えられた部分があちらこちらに
あり、少し原作からは遠ざかります。
しかし、
物語の奥行きを深めて、物語をより理解しやすく
書き加えられているので、
読み物として大変面白く読めます。
新潮社 円地文子訳 源氏物語 全六巻
橋本治
橋本治氏の「窯変 源氏物語」は、
光源氏の視点で物語を語る形式で
ストーリーが進みます。
光源氏の気持ちなども加筆され、
面白いと高評価をつける人が多いです。
関西弁で書かれている
・中井和子
・田辺聖子(私本源氏物語)
中井和子先生の
「現代京ことば訳 源氏物語」は
全体が京都方言で書かれています。
普段、関西弁を話す方にとっては
読みやすいでしょう。
田辺聖子先生の「私本源氏物語」は、
会話文が関西弁で語られています。
だ、である調 VS です、ます調
・与謝野晶子
・玉上琢弥
・円地文子
・林望
・角田光代
・田辺聖子
・谷崎潤一郎
・瀬戸内寂聴
・中井和子
・大塚治
・荻原規子
語尾の表現は好みの問題となりますが、
個人的には「ですます調」のほうが
優しく雅な印象が強いですね。
「だ、である調」は
簡潔でわかりやすすさが増すイメージです。
その点、瀬戸内寂聴氏の現代語訳は、
読みやすさと美しさを兼ねそろえて
おすすめです!
この記事では、
源氏物語の現代語訳について
わかりやすい本、面白い本を
紹介してきました。
最終的には、個人の好みの問題になるので、
迷ったら一度、図書館に行って
いくつか読み比べしてみると良いですよ😊
源氏物語が書かれた時期について
詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです!