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このサイトの管理人
30代後半の主婦。
高校生の頃から源氏物語に興味を持ち始めました。大学では源氏物語を研究し、日本語日本文学科を首席卒業しました。
30代になり、源氏物語を改めて学びなおしています。
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大河ドラマ「光る君へ」放送中! 漫画「あさきゆめみし」で源氏物語を学ぼう!

紫の上はかわいそう?どんな人なのか死因も含めて解説しました!かわいいと言われる理由も。

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紫の上はかわいそう?どんな人だったのかを解説。

源氏物語 初心者
源氏物語に出てくる紫の上は、かわいそうな女性だって聞いたよ。どんな人だったの?

筆者
紫の上は、光源氏にとって最愛の女性だったんだよ。でもその人生は苦労の連続で…。

この記事でわかること

・紫の上が可哀想と言われる理由
どんな人だったか。
 その生涯とエピソードの解説。


・紫の上が可愛いと言われる理由
性格と容姿の解説。

・紫の上の死因
・紫の上は不妊症だったかどうか
・紫の上の魅力

この記事を読むことで、
源氏物語の紫の上について
その生涯や性格を詳しく知ることができます。

ぜひ最後までお読みください😊

目次

紫の上はかわいそう?どんな人だったの?

光源氏の最愛の妻として、
現代の読者からも人気が高い紫の上

筆者
紫の上のことを「可哀想」と思う読者はかなり多いです。


では、紫の上とはどんな人だったのでしょうか?

まず、紫の上の家系図と人生について
詳しく解説していきますね。

紫の上の家系図

以下は、紫の上にクローズアップした
相関図です。

源氏物語 紫の上周辺の相関図
紫の上周辺の相関図

第一部全体の相関図は以下です。

源氏物語 紫の上の相関図
タップして拡大します

式部卿宮:紫の上の父親。
始めは兵部卿宮であり、
後に式部卿宮となる。
本妻がいたが、按察使大納言の娘を
愛人とし、紫の上が誕生する。

故姫君:紫の上の母親。
紫の上を産んですぐ亡くなる。
式部卿宮の側室(愛人)だった。

藤壺の宮:式部卿宮の妹であり、
紫の上の叔母。

明石の君:光源氏の側室の一人。
紫の上は明石の君に強く嫉妬する。

明石の姫君:光源氏と明石の君の間に
生まれた娘。紫の上が養母となり育てる。

ここで大切なことは、
紫の上は藤壺の中宮の姪にあたるということです。

筆者
紫の上は、藤壺に顔がそっくりなんだよ。性格も似ていました。

藤壺の中宮って誰?

藤壺中宮は、光源氏の義母。
光源氏にとっては初恋の人であり、
理想の女性でした。

紫の上の生涯(出生~結婚)

母・按察使大納言の娘は、
紫の上を産んですぐ亡くなりました。

母は愛人だったため、
父の兵部卿宮は本妻に気を遣って
娘をひきとれず、
紫の上は母方の祖母・北山の尼君に
預けられ、養育されたのです。

筆者
ちなみに、子ども時代の紫の上のことを「若紫」と呼びますが、この記事では混乱を避けるため「紫の上」で呼び方を統一しますね。


紫の上が10歳くらいになった時、
光源氏が瘧病(わらわやみ)の療養のために
京都の北山を通りかかります。

瘧病(わらわやみ)とは?

瘧病(わらわやみ)とはマラリアに似た
熱病で、発熱や悪寒の発作が
間隔をおいて起こる病気。
伝染病。

北山で、
光源氏は、憧れの女性・藤壺中宮に
そっくりの子ども(紫の上)を見つけ
強い興味を持ちます。

若紫(紫の上:左)が飼っていた雀を逃がした女童(犬君:右下) 長次郎「源氏物語画帖 若紫」
若紫(紫の上:左)が飼っていた雀を逃がした女童(犬君:右下) 長次郎「源氏物語画帖 若紫」


筆者
憧れの人そっくりの女の子を、自分の理想通りに育ててみたいと思ったんだよ。


北山の尼君が亡くなった後、
源氏は紫の上を
自宅の二条院にひきとって
自分好みの女性となるよう養育
します。

葵祭の当日、紫の上の髪を切る光源氏 「源氏物語図屏風 断簡」
葵祭の当日、紫の上の髪を切る光源氏 「源氏物語図屏風 断簡」

源氏物語 初心者
それって現代的な言葉でいうと「誘拐」じゃないの…?😅


やがて正妻の葵の上が
出産の後に亡くなった後に、
光源氏と紫の上は男と女として結婚するのです。

筆者
紫の上は、まだ14歳だったよ。


これまで、父のように兄のように
慕ってきた光源氏が突然、
夫になった
わけですから、紫の上は
大きなショックを受けました。

該当シーンは
「あさきゆめみし」2巻に登場します。

源氏物語 初心者
紫の上、かわいそう…。

筆者
でも、紫の上は妻として、光源氏に心を開くようになるんだよ。

10歳で光源氏に引き取られた紫の上は、
光源氏の好みの女性に養育された後、
14歳で夫婦関係となった。

紫の上の生涯(結婚~死没)

光源氏は右大臣家の画策により
一時期、須磨・明石に左遷となります。

その際には、
紫の上は光源氏の領地や土地の証書など、
一切の資産の管理を任されます。

筆者
美しく聡明な紫の上は、源氏から信頼されていました。


光源氏が明石から復帰した後には、
明石の君と光源氏が結ばれたと知り、
紫の上は強い嫉妬を示しています。

\明石の君の解説記事はこちら/

源氏物語 初心者
夫が地方で浮気したってことでしょ?😡そりゃ怒るよね!


しかし、紫の上はもともと子ども好きなので、
明石の君が産んだ
明石の姫君(後の明石の中宮)の
養母となって子育て
をするのです。

明石の上が住む大堰への外出を紫の上に告げる光源氏と、 引き留める幼い明石の姫君。 「源氏物語色紙絵 薄雲」
明石の上が住む大堰への外出を紫の上に告げる光源氏と、 引き留める幼い明石の姫君。 「源氏物語色紙絵 薄雲」


源氏物語 初心者
ええ?夫と浮気相手の間に生まれた子を育てるの?紫の上、めっちゃ心広い人だな…😥

筆者
紫の上は、明石の姫君をすごく可愛がって育てたよ。

光源氏から信頼されていた紫の上は、
浮気相手の産んだ姫君の養育をした。

※明石の君の身分が低いので、
姫君の将来(入内)のことを考慮し、
紫の上に母代わりをさせた。

六条院という豪邸が完成すると、
紫の上は「春の御殿」に住み、
正妻格の立場として重んじられます。

筆者
あくまで「正妻格」であり、正妻ではなかったみたい。


六条院で一番格上の妻として
安定した日々が送れると思いきや、
朱雀院の皇女、女三の宮
光源氏の正妻になることが決まり、
紫の上は大きなショックを受けます。

\女三の宮の解説記事はこちら/

女三の宮のもとへ向かう源氏に歌を贈る紫の上 土佐光則「源氏物語画帖 若菜上」
女三の宮のもとへ向かう源氏に歌を贈る紫の上 土佐光則「源氏物語画帖 若菜上」

紫の上は、やがて胸の病気にかかってしまいます。
六条御息所の霊にとりつかれて
絶命しますが、奇跡的に生き返ります。

源氏物語 初心者
女三の宮が源氏の正妻になったショックで病気に?


\六条御息所の解説記事はこちら/

その後は
なんとなく調子が悪い日々が続き、
光源氏に出家を願い出るも許可されず、
ついに亡くなってしまいます。


筆者
紫の上は、43歳で亡くなってしまいました。


その後の幻の巻では、
紫の上の追悼の物語が描かれ、
光源氏は長年、自分の浮気心から
紫の上を悩ませてきたことを悔いるのでした。

紫の上は一見、幸福者でしたが、
夫・光源氏の浮気癖に
悩まされた人生だった。
晩年の唯一のお願い事「出家」も許されなかった。

紫の上のエピソード年表

紫の上の生涯のエピソードを
簡単に年表にまとめてみました。

スクロールできます
巻名できごと光源氏の年齢紫の上の年齢
若紫光源氏、北山で紫の上を見つけ、
藤壺の宮に似た容姿にくぎ付けになる。
紫の上の祖母の尼君が死去。
弔問に訪れた光源氏、紫の上に添い寝する。
父・兵部卿宮が紫の上を引き取ろうとする。
光源氏、紫の上を盗みとる。
紫の上、習字やお絵描きなどして過ごす。
18歳10歳
末摘花光源氏、鼻を赤く塗って、紫の上と戯れる。19歳11歳
紅葉賀紫の上、源氏になついていく。
祖母の喪が明けて喪服を脱ぐ。
紫の上、雛遊びに夢中。
光源氏、紫の上に琴を教える。
18歳~
19歳
10歳~
11歳
花宴紫の上、美しく賢く理想的な成長ぶり。20歳12歳
光源氏、紫の上の髪を削ぎ整える。
2人で賀茂祭を見物する。
光源氏と紫の上、契りを結ぶ。
紫の上、大きなショックを受ける。
光源氏、紫の上のご機嫌とりに苦心する。
三日の夜の餅を食べる。(結婚の儀式)
裳着の準備をする。
22歳14歳
賢木紫の上の幸福が説明される。
父の正妻(継母)が紫の上に嫉妬する。
紫の上の筆跡が上達。
(源氏の文字によく似ている)
紫の上の教育の成功が語られる。
24歳16歳
須磨光源氏、須磨へ流離。
紫の上、深く悲しむ。
紫の上の継母、紫の上の不幸を喜ぶ。
紫の上に資産を任せる。
紫の上、須磨へ着物などを贈る。
26歳18歳
明石光源氏、明石の君と契る。
紫の上に浮気の弁明の手紙を書く。
光源氏、許されて帰京。
二年半ぶりに紫の上と感動の再会。
28歳20歳
澪標紫の上、浮気相手の子・明石の姫君の誕生を知り、嫉妬する。
光源氏、六条御息所の娘を養女とする。
紫の上、話し相手ができることを喜ぶ。
28歳~
29歳
21歳~
22歳
絵合光源氏と紫の上、一緒に絵合わせの絵を選ぶ。31歳23歳
松風光源氏、紫の上に明石の姫君を養女にすることを相談。
紫の上、子どもを育ててみたいと思う。
31歳23歳
薄雲光源氏、明石の君に紫の上の善良さを語る。
紫の上、明石の姫君を愛情こめて育てる。
紫の上、「春の曙」が好きであることが判明。
31歳~
32歳
23歳~
24歳
朝顔光源氏が朝顔の君に求婚。紫の上、嫉妬する。
光源氏、紫の上の前で雪だるまを作らせる。
光源氏、紫の上に交際してきた女の特徴を語る。
32歳24歳
少女六条院完成。紫の上、二条院から六条院に移る。
父・式部卿宮の五十の賀の祝いの準備をする。
35歳27歳
玉鬘紫の上、夕顔と明石の君に嫉妬を示す。
紫の上、歳末の衣配りの衣装を製作。
35歳27歳
初音新春の春の御殿、紫の上周辺の立派で幸福な様子。36歳28歳
胡蝶紫の上、秋好中宮と和歌を贈答。
紫の上、光源氏の玉鬘への下心を疑う。
36歳28歳
光源氏と紫の上、物語について語らう。36歳28歳
野分光源氏の子・夕霧、紫の上の姿を垣間見。
紫の上の美貌に恋心を抱く。
台風の去った明け方、光源氏と紫の上、睦まじく語らう。
36歳28歳
行幸玉鬘の宮仕えについて、光源氏と二人で語らう。36歳28歳
真木柱髭黒大将の北の方と父式部卿宮
光源氏と紫の上を恨む。
37歳~
38歳
29歳~
30歳
梅枝紫の上、薫物合わせで三種の薫物を調合する。
光源氏、紫の上の前で過去の女君の筆跡を語る。
朧月夜と紫の上と朝顔は仮名が上手だと評価。
39歳31歳
藤裏葉賀茂の御阿礼祭に参詣。
光源氏、葵の上の車争いの事件を紫の上に語る。
明石の姫君の入内。紫の上、明石の君と対面する。
39歳31歳
若菜上紫の上、光源氏と女三の宮の結婚に
ショックを受けるが、強いて穏やかに振る舞う。
女三の宮降嫁の準備を手伝う。
光源氏、紫の上の夢を見る。
光源氏、紫の上の気持ちを宥める。
朱雀院、紫の上に手紙にて女三の宮の後見を依頼。
紫の上、光源氏と朧月夜の逢瀬を察する。
紫の上、女三の宮と対面。
紫の上、源氏四十賀のために薬師仏供養を行う。
紫の上、明石の姫君の第一皇子誕生を喜ぶ。
39歳~
41歳
31歳~
33歳
若菜下紫の上、出家を希望するが許されず。
住吉参詣にて神楽を見る。
明石の姫君の女一の宮を引き取って育てる。
六条院の女楽で、紫の上は和琴を演奏する。
夕霧、紫の上を想う。
紫の上、発病し、二条院で療養。
一時絶命するが蘇生し回復。
六条御息所の死霊が出現。
紫の上死去の噂が流れる。
紫の上、髪を少し切り五戒のみ受ける。
41歳~
47歳
33歳~
39歳
横笛紫の上、三の宮(匂宮)を引き取って養育。49歳41歳
鈴虫紫の上、女三の宮の持仏開眼供養の準備をする。50歳42歳
夕霧光源氏、自分の死後の紫の上を心配する。50歳42歳
御法紫の上、体調不良が続く。
再度出家を願うが許されず。
法華経供養の法会を開催。
明石の姫君、匂宮と対面する。
明石の姫君に看取られ死去。
紫の上の葬儀。
51歳43歳
光源氏、深く悲しみ、出家。
紫の上の一周忌法要を開催。
52歳
紫の上の生涯とエピソード

全体のあらすじを知りたい方は、
こちらの記事を参考にしてくださいね。

紫の上のどんなところが可哀想?

源氏物語 初心者
紫の上の人生って良く言えば「シンデレラストーリー」なんだけど、なんか不自由で可哀想な人生だよね…。


紫の上がかわいそうだと言われている
ポイントは、下記の4点です。

  • 14歳で強引に結婚させられた
  • 光源氏の頻繁な浮気に悩まされた
  • 正妻になれなかった
  • 出家をさせてもらえなかった

意思に反して14歳で結婚

紫の上は、
10歳の頃に光源氏の養女となり、
光源氏の理想の女性として養育され、
14歳で夫婦の仲
となります。

源氏物語画帖 若紫
源氏物語画帖 若紫

本人の意思とは全く無関係に、
光源氏の趣味により養女となり、
強引に結婚させられたのだから
多くの人は「紫の上が可哀想」と感じることでしょう。

光源氏の浮気に悩む

さらに、光源氏の妻となってからも、
紫の上は夫の頻繁な浮気に悩まされます。

特に、姫君を出産した明石の君と、
正妻の地位におさまった女三の宮には
強い嫉妬や悲しみの感情を見せています。

正妻になれなかった

紫の上は、母親が
愛人だったため光源氏の正妻になれませんでした。
(正妻格ではありました)

「若菜上」の巻では、紫の上は
自身の不安定な身分を嘆いています。

出家させてもらえない

晩年は体調を崩して
最後のお願いとして出家を望みますが、
出家させてもらえません。

紫の上は、自身の極楽往生を願うため、
出家を強く希望しました。

しかし、
光源氏は、紫の上が尼になったら、
自分の生活が味気なくなると思い、
出家を許さなかったのです。

光源氏に最も愛された女性ではありますが、
自分の思い通りになる人生ではありませんでした。

源氏物語 初心者
光源氏、自分勝手すぎる。臨終の出家さえ許されなかった紫の上、一番可哀想…😭


紫の上は正妻だった!
と主張する本もあります。

源氏物語を新しい解釈で読んでいるので、
興味があればぜひ読んでみてくださいね。

紫の上は幸せだったのか?

源氏物語 初心者
私は紫の上は不幸だったと思うんだけど、実際、どうだったの?幸せだったのかな?


紫の上が幸せだったか?
という議論はたいへん難しいです。

究極のところは、
それは本人でないと分からないと思いますし、
読む人の感性によって意見が変わってくるものです。

もちろん、源氏物語は作り物語
(フィクション)なので、
紫の上は実在する人物ではありません。

私個人の意見では、
紫の上は辛いことも多かったけれど、
自分の人生にそれなりに満足
していたのではないかと思います。


確かに紫の上は
自分の意志では何も決められない
立場で、光源氏の側室として生涯を終えました。

源氏から強く愛されていましたが、
浮気による気苦労も多かったのです。

しかし、紫の上は光源氏に出会わなければ、
式部卿宮の愛人の娘として
良い縁談にも恵まれなかったでしょうし、
不名誉な人生や経済的な苦労をする人生が
待っていたかも知れません。

紫の上は子どもを産みませんでしたが、
明石の姫君を養女として
たいへん熱心にお世話をしています。

筆者
明石の姫君の息子の匂宮も、自分の孫としてたいへん可愛がっています。


子育て・孫育ての喜びも感じ、
夫からは格別に愛され、
周囲からの人望もあり経済的な不自由もなく、
それなりに自分の人生に
満足していたのではないでしょうか?

歳暮の衣配りをする紫の上と光源氏 衣配りは正妻の役割だった。「源氏物語画帖 玉鬘」
歳暮の衣配りをする紫の上と光源氏 衣配りは正妻の役割だったので、紫の上は正妻格の存在だった。
「源氏物語画帖 玉鬘」

たしかに光源氏の浮気癖と、
正妻になれない身分の不安定さには
悩まされていたと思います。

しかし、紫式部は

「女はみな、幸せそうに見える人でも、生きづらさを抱えているものだ」

ということを「源氏物語」を通して
読者に伝えようとしたのではないでしょうか?

紫の上は現代人から見ると
可哀想なポイントが多いが、
そこそこ幸せな人生だったのではないか?

「源氏物語」は
貴族女性の生きづらさに焦点をあてた
物語である。

幸せそうに見える人であっても、
悩みを抱えていることを
紫の上の人生を通して表現している。

紫の上の死因は何だったの?

源氏物語 初心者
紫の上って何の病気だったの?


紫の上が何の病気で亡くなったのか、
その死因ははっきりとはわかりません。

紫の上の病状がわかる部分を
抜き出してみましょう。

【源氏物語 原文】
夜更けて大殿籠もりぬる、暁方より、御胸を悩みたまふ。

【現代語訳】
夜が更けてお休みになったが、明け方から、お胸をお病みになる。

「若菜下」より引用

【源氏物語 原文】
「いかなる御心地ぞ」とて探りたてまつりたまへば、いと熱くおはすれば、

【現代語訳】
「どんなご気分ですか」と手をさし入れなさると、とても熱っぽくいらっしゃるので

「若菜下」より引用

【源氏物語 原文】
胸は時々おこりつつ患ひたまふさま、堪へがたく苦しげなり。

【現代語訳】
胸に時々発作が起こってお苦しみになる様子は、我慢できないほど苦しげである。

「若菜下」より引用

胸が痛み、時々発作が起こって、
発熱もしていた
ようです。

「御法」の巻では、
「こよなう痩せ細りたまへれど」という
記述もあり、食事もとれなくなり、
体重が減ってしまっている様子
も見られます。

「胸の痛み」というのが
心臓の痛みなのか、肺の痛みなのか
わからないので判断が難しいですが、
結核や心臓病などの病気が考えられます。

紫の上がかわいいと言われる理由

紫の上は、
源氏物語に登場する女君の中でも
たいへん人気のあるキャラクターです。

容姿の美しさに加え、

  • 素直
  • 嫉妬しやすい
  • 子ども好き
  • 穏やかで寛大

といった
性格が可愛らしいと評価されています。

紫の上が「可愛い」と言われる理由
紫の上が「可愛い」と言われる理由

源氏物語を読み進めるほどに、
紫の上の愛らしさに魅了されてしまいます。

漫画「あさきゆめみし」でも
紫の上は可愛らしい姫君として書かれていますよね。

紫の上の性格と容姿について、
詳しく説明しますね。

紫の上の性格

紫の上の性格を簡単にまとめると…

子ども時代
・無邪気で素直な性格
・純粋

大人になってから
・穏やかで優しい
・利発で聡明
・子ども好き
・嫉妬しやすい性格

具体的に説明しますね。

無邪気で素直な子ども時代

祖母の尼君は、
10歳の紫の上のことを

「いとはかなうものしたまふ」
(たいへん子どもっぽくいらっしゃる)

と言っています。

雀を伏籠の中に閉じ込めて遊んだり、
年齢よりも幼い雰囲気の
お転婆な少女時代
を過ごしていました。

光源氏に盗み出されて
二条院に住み始めてからは、
最初は怯えていましたが、
素直な気持ちで光源氏に接して、
なついていく様子
が描かれています。

光源氏になついていく紫の上 土佐光則「源氏物語画帖 若紫」
光源氏になついていく紫の上 土佐光則「源氏物語画帖 若紫」

和歌も上手く作るので、
子どもっぽいながら
才気のある少女だったようです。

子ども時代の紫の上は、
子どもっぽく無邪気でお転婆。
素直で才気のある少女だった。

あさきゆめみしに出てくる
子ども時代の紫の上(若紫)は
とっても可愛いので、ぜひ読んでみてください😍
1巻に出てきます。

聡明で光源氏から信頼されていた

紫の上は、
容貌や性格が可愛らしいだけではなく、
頭が良いことで光源氏から信頼されていました。

【源氏物語 原文】 
さぶらふ人びとよりはじめ、 よろづのこと、みな西の対に聞こえわたしたまふ。領じたまふ御荘、御牧よりはじめて、 さるべき所々、券など、みなたてまつり置きたまふ。

【現代語訳】
お仕えしている男女をはじめ、家のことをすべて西の対にお頼み申し上げなさる。ご所領の荘園、牧場をはじめとして、しかるべき領地、証文など、すべて紫の上の手元に置いていかれる。

「須磨」の巻

須磨に退去することを決めた光源氏は、
紫の上の元に全ての資産を預けて旅立つのです。

これは、彼女の賢さを見込んでのことと思われ、
紫の上が聡明でしっかりとした女性だったことが窺わせられます。

子ども好き

紫の上はたいへん子ども好きでした。

光源氏と明石の君の娘、
明石の姫君を養女とし、可愛がって育てます。

【源氏物語 原文】
稚児をわりなうらうたきものにしたまふ御心なれば、「得て、抱きかしづかばや」と思す。

【現代語訳】
非常に子ども好きなご性格なので、「引き取ってお育てしたい」とお思いになる。

「松風」の巻

さらに、
明石の姫君の産んだ
女一宮と三の宮(匂宮)も養育しており、
特に匂宮は深く可愛がっていました。

紫の上は、
子どものお世話をするのが好き。
面倒見がよく、愛情深い女性だった。

春が好きで朗らかな人柄

紫の上の好きな季節は春でした。

薄雲の巻には「春秋優越論」と呼ばれる
部分があり、光源氏のセリフとして
以下のような記述が見られます。

【源氏物語 原文】
君の、春の曙に心しめたまへるもことわりに こそあれ。時々につけたる木草の花によせても、御心とまるばかりの遊びなどしてしがな

【現代語訳】
あなたが、春の明け方に心を寄せていらっしゃるのもよくわかります。季節折々に咲く木や草の花を見ながら、あなたの気に入るような催し事などをしてみたい

「薄雲」の巻

このセリフからわかるように
紫の上は春を愛する女性でした。

六条院では東南の「春の御殿」に住み、
春の花の木が美しい庭を眺めながら
暮らしていたのです。

筆者
桜や紅梅、藤などの明るい色彩の花が好きな、朗らかな人柄が想像できますね。

嫉妬はするが、我慢強く穏やか

光源氏は、
紫の上を最愛の妻としながらも、
多くの女性に思いを寄せます。

紫の上はその都度、
嫉妬心を見せるのですが、
結局、光源氏に言いなだめられます。

筆者
怒りを爆発させることもなく、我慢の連続の人生でした。


特に、姫を出産した明石の君には
強い嫉妬心を抱いていたようです。

嫉妬しているとはいえ、
紫の上はとても優しい性格をしていて、
明石の君と対面したときには
お互いに素晴らしさや美しさを認め、
二人の間には友情が芽生えたのです。


女三の宮と光源氏の結婚にも
強くショックを受け、嫉妬しますが、
恨みの気持ちを表に出さず
結婚の準備を手伝ったりして
強いて穏やかに努める様子が印象的です。

※紫の上は女三の宮とも友情を築いてしまいます。

紫の上は、嫉妬はするけれど、
思慮深く穏やかで寛大。
強く嫉妬していた女君たちの素晴らしさも
認め、友達になってしまうほど
性格が良い女性であった。

ちなみに、紫の上は
妻の一人として源氏から大切にされていた
花散里とも妻同士として良い関係を築いていました。

紫の上は藤壺と性格が似ている

「朝顔」の巻で、光源氏は
「しとやかで嗜み深いところ」
紫の上と藤壺の宮(叔母)は似ていると語っています。

ただし、紫の上は
小うるさくて、利発で嫉妬深いところが
藤壺の宮とは異なるとのこと。

源氏物語 初心者
嗜みがあって聡明で、優しく穏やかだけど、ちょっと嫉妬深い…。紫の上の人柄って素敵だな。

紫の上の容姿は美人だった!?

紫の上は容姿も
非常に美しかったと書かれています。

容貌に関わる記述を
いくつか抜き出してみましょう。

【源氏物語 原文】
いみじく生ひさき見えて、うつくしげなる容貌なり。髪は扇を広げたるやうにゆらゆらとして、顔はいと赤くすりなして立てり。

【現代語訳】
とても将来が楽しみな、可愛らしい顔かたちである。髪は扇を広げたようにゆらゆらとして、顔は非常に赤く手でこすって立っている。

「若紫」の巻より

【源氏物語 原文】
つらつきいとらうたげにて、 眉のわたりうちけぶり、いはけなくかいやりたる額つき、髪ざし、いみじううつくし。

【現代語訳】
顔つきがとても可愛らしく、眉のあたりがほんのりとして、子供っぽく髪を横撫でにしている額や、髪の生え際にも可愛らしさが見える。

「若紫」の巻より

【源氏物語 原文】 
うちそばみて笑ひたまへる御さま、飽かぬところなし。

【現代語訳】
横を向いて笑っていらっしゃるお姿は、全く非の打ち所がない。

「葵」の巻より

上の3例は、紫の上の少女時代の記述です。
下記2例は、大人になってからの様子です。

【源氏物語 原文】 
気高くきよらに、さとにほふ心地して、 春の曙の霞の間より、おもしろき樺桜の咲き乱れたるを見る心地す。

【現代語訳】
気高くきれいで、ぱっと輝く感じがして、春の曙の霞の間から、美しい樺桜が咲き乱れているのを見る感じがする。

「野分」の巻

【源氏物語 原文】
「 こよなう痩せ細りたまへれど、 かくてこそ、あてになまめかしきことの限りなさもまさりて めでたかりけれ」と、来し方あまり匂ひ多く、あざあざとおはせし盛りは、なかなかこの世の花の薫りにもよそへられたまひしを、限りもなくらうたげにをかしげなる御さま

【現代語訳】
「すっかり痩せ細っていらっしゃるが、かえって一段と上品で優美でいらっしゃるように見えて素晴らしい」と、今まで華やかでいらっしゃった女盛りは、花の香にも喩えられていたが、この上もなく可憐で美しいご様子

「御法」の巻
源氏の息子・夕霧は、「野分」の巻で紫の上の姿を垣間見する。 土佐光則「源氏物語画帖 野分」
源氏の息子・夕霧は、「野分」の巻で紫の上の姿を垣間見する。 土佐光則「源氏物語画帖 野分」

紫の上は、
幼い頃は髪の美しさ、可愛らしさが
強調されますが、
大人になってからは樺桜にたとえられ、
笑顔の美しい美女だったようです。

※「野分」では樺桜、
「若菜下」においては桜に喩えられています。

桜古木・石戸の蒲桜
桜古木・石戸の蒲桜

病気になって痩せてしまってもなお、
上品な美しさが漂っていたとのこと。

源氏物語 初心者
紫の上って絶世の美女だったんだね。

筆者
映画では、常盤貴子さんや中谷美紀さんが紫の上を演じたよ。


2001年に公開された
「千年の恋 ひかる源氏物語」では、
常盤貴子さんが紫の上を演じました。

⇒Amazonプライムビデオで「千年の恋 ひかる源氏物語」を見る!

光源氏は天海祐希、
幼少期の頭中将で三浦春馬さんが
出るなど、豪華キャストで面白かったです。

紫の上は不妊だった!?

源氏物語 初心者
紫の上って不妊症だったのかな。


紫の上は、
光源氏の最愛の女性ですが、
二人の間には子どもが出来ませんでした。

紫の上は、現代的に言うと
いわゆる不妊だったことになります。

子どもが出来ないことを
悩むような記述はありませんが、
紫の上は娘を産んだ
明石の君のことを強く嫉妬しています。

本人も自分に子がないことを
気にしていたのでしょう。

子ども好きだった紫の上は、
明石の姫君や匂宮などを養育しますが、
自分の子どもを育てることはできませんでした。

紫式部は、紫の上に
子どもが出来ない現実を描くことで
現実の皮肉さや不条理さを
表現しようとした
のかも知れませんね。

筆者
最愛の妻・紫の上に子どもが出来ないなんて、皮肉な人生ですよね。

紫の上の魅力とは

紫の上から感じられる魅力は、
人によって異なるでしょう。

  • 子ども時代のあどけない発言や仕草
  • 子ども好きで明石の姫君などを可愛がっていた
  • 光源氏の浮気を我慢し続けていたところ

などに魅力を感じる人も
多いと思いますが、私が思う
紫の上の大きな魅力は、

深い嫉妬の感情を抱いていた
明石の君と友達になれてしまうほどの
器の大きさ
です。

「藤裏葉」の巻で、
明石の姫君が東宮の妻として
入内することが決まり、
その実の母・明石の君と
養母・紫の上は初めて対面をします。

二人はお互いに相手を
素晴らしいと認め合って、
友達になっていく
んです。

【源氏物語 原文】
御仲らひあらまほしううちとけゆくに、さりとてさし過ぎもの馴れず、あなづらはしかるべきもてなし、はた、つゆなく、あやしくあらまほしき人のありさま、心ばへなり。

【現代語訳】
二方の仲は睦まじくなっていくが、出過ぎたり馴れ馴れしくはせず、軽く見られるような態度も、もちろん、全くない。不思議なほど理想的な方の態度、心構えである。

「藤裏葉」の巻

紫の上は、
光源氏の浮気相手である
明石の君に強い嫉妬心を抱いていました。

言わばライバルのような存在です🔥

そんな明石の君と友情を交わせる
紫の上の寛大な人柄は、大きな魅力として
読者を惹き付けています。

筆者
現代人も、紫の上の大らかな心を見習いたいですね。


\明石の君の人柄や生涯を解説/

聡明かつ我慢強く、穏やかで善良な性格。
容姿も美しい上に、和歌も琴も上手。
紫の上は光源氏にとって理想の女性だったのです。

源氏物語 初心者
紫の上は現代の男の人からも、モテそうだな。


この記事では、
紫の上の生涯や性格、容姿について
詳しく解説しました。

読者の方が、
紫の上についての理解を
より深めることが出来たなら嬉しいです。

まだ現代語訳にチャレンジできていない方は、
こちらの記事を参考にしてみて下さいね!

他の登場人物について知りたい方は、
こちらの記事を読んでみてください。



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