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撫子
このサイトの管理人
30代後半の主婦。
高校生の頃から源氏物語に興味を持ち始めました。大学では源氏物語を研究し、日本語日本文学科を首席卒業しました。
30代になり、源氏物語を改めて学びなおしています。
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大河ドラマ「光る君へ」放送中! 漫画「あさきゆめみし」で源氏物語を学ぼう!

【源氏物語】明石の君ってどんな人?性格や見た目、紫の上との関係などを家系図つきで解説!光源氏との出会いのシーンも。

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源氏物語の明石の君ってどんな人?性格、容姿、年齢、身分などを家系図つきで紹介!

源氏物語 初心者
「源氏物語」の明石の君ってどんな人なの?詳しく教えて!


明石の君光源氏の妻の一人であり、
明石の御方おんかた
明石の上、
などとも呼ばれています。

「源氏物語」で中心的な人物の一人であり
非常に魅力的な性格の女君です。

筆者
この記事では、明石の君について詳しく紹介していきます😊

この記事でわかること


・家系図、性格、容姿、身分、年齢
・光源氏との出会いと別れ
・人生年表
・紫の上との関係性
・明石の君の魅力とは

かなり長い記事になってしまいました。

下記のタップできる目次を利用して、
読みたいところからお読みください✨

目次

明石の君ってどんな人?家系図・性格・見た目など

明石の君とはどんな人だったのか、
人物像について深く掘り下げていきましょう。

まずは、明石の君の家系図と、
周辺の人間関係について解説しますね。

明石の君の家系図

以下は、明石の君にクローズアップした
家系図です。

源氏物語 明石の君 家系図・相関図
明石の君 周辺の家系図

「源氏物語」全体の相関図については、
こちらの記事を参考にしてくださいね。

<明石の君 周辺の人物紹介>

明石の君:光源氏の妻の一人。
明石に流浪していた光源氏と出会い
姫君を出産する。

明石の入道:明石の君の父親。
大臣の息子であったが、
風変りな性格で、近衛中将の位を捨て、
播磨の受領となる。受領も性に合わず
出家して明石に住んでいる。
「娘が国母の母になる」という
夢のお告げを信じ、明石の君を大切に育てる。


明石の尼君:明石の君の母親。
祖父は中務宮という親王(天皇の皇子)
であり、高貴な家の出だったため、
明石の君に上流の教育を与えた。

明石の姫君:明石の君と光源氏の娘。
1歳半で紫の上の養女として預けられ、
やがて東宮(のちの今上帝)の后となる。
今上帝から寵愛を受け、

第一皇子は東宮となる。

光源氏:「源氏物語」の主人公。
政敵・右大臣に睨まれ都を追放され、
須磨・明石を流浪する。
明石にて、明石の君と出会い娘をもうける。

紫の上:光源氏にとって最愛の妻。
源氏と明石の君との関係を知り、
嫉妬するが、明石の君の産んだ
明石の姫君を養女として可愛がる。


今上帝:光源氏の異母兄である朱雀帝の皇子。
東宮時代に明石の姫君が入内する。
明石の姫君を寵愛する。

明石の君の家系図について、
おさえておきたいポイントは、

明石の君の父・明石の入道が
光源氏の母・桐壺の更衣と従兄妹いとこ 関係だった
ということです。


筆者
要するに明石の君と光源氏は、はとこ同士なのです。

また、明石の君と光源氏の子
明石の姫君が今上帝との間に
もうけた第一皇子が
東宮になっていることも大きなポイントです。

平安時代に実在した藤原道長が
娘・彰子を一条天皇に入内させ、
生まれた皇子を東宮⇒天皇にしたように、
光源氏も外戚政治を行っていた
ということです。

外戚政治とは

外戚政治とは、娘を天皇の后にし、
生まれた皇子を天皇にして
天皇の祖父となることで権力を握る
政治の形のこと。

外戚政治という共通点があることから
藤原道長は光源氏のモデルの一人だと
言われています。

源氏物語 初心者
明石の君周辺の人間関係はわかったよ!明石の君はどんな性格をしていたの?


明石の君の性格

明石の君の性格で、最も重要なポイントは
謙虚さとプライドです。

筆者
謙虚さとプライドをバランスよく持っていたことで、光源氏から大切にされ、幸福な人生を送ることができたのです。

★明石の君の性格★
  • プライドが高い
  • 謙虚である
  • 野心が強い
  • 教養が高い

明石の君は田舎に住まう中流貴族でしたが
まるで都の上流貴族のような人柄でした。

では、「源氏物語」の原文を引用しながら、
詳しくみていきましょう!

プライドが高い

明石の君は非常にプライドの高い女性でした。
プライドの高さが分かるエピソードを
3つ紹介しますね。

★エピソード1★

明石の君の両親は、幼い頃から娘が
高貴な人と結婚できるように大切に育て、
高い教養を与えてきました。

そのため、明石の君は誇り高く成長し、
身分の高い人と結婚できないなら、
一生結婚しないと心に決めていたのです。

【源氏物語 原文】
身のありさまを、口惜しきものに思ひ知りて、「 高き人は、我を何の数にも思さじ。ほどにつけたる世をば さらに見じ。命長くて、思ふ人びとに後れなば、尼にもなりなむ、海の底にも入りなむ」

【現代語訳】
自分の境遇を、残念な者だとわきまえて、「高貴な方は、私を物の数にも入れて下さるまい。身分相応の結婚は絶対に嫌。長生きして、両親に先立たれたならば、尼にもなろう、海の底にも沈んでしまおう

『源氏物語』「須磨」の巻より引用

高貴な人との結婚が叶わないならば、
出家して一生独身、もしくは命を捨ててしまおう
とまで思いつめていたのです。

源氏物語 初心者
絶対に高貴な人のお嫁さんになる!って決めてたんだね。それが叶わないなら海の底に…ってプライド高すぎ。

明石の君と光源氏
「源氏物語画帖 初音」住吉如慶筆 江戸時代
明石の君と光源氏
「源氏物語画帖 初音」住吉如慶筆 江戸時代
★エピソード2★

また、明石の君は
高貴な人との結婚を望む一方で、
娼婦のように愛人になることは強く拒みました。

光源氏は、最初は明石の君を
身分の低い者として軽く見ていました。

光源氏
卑しい女は、軽い気持ちで愛人になるものだ。だから明石の君も積極的に源氏に寄ってくるんじゃないか?

と、光源氏は期待していたのですが、
明石の君は、誇り高い女性なので
全く近寄ってくる様子がなく、源氏はイライラしてしまいます。

【源氏物語 原文】
「人進み参らば、さる方にても、紛らはしてむ」と思せど、 女はた、なかなかやむごとなき際の人よりも、いたう思ひ上がりて、ねたげにもてなしきこえたれば、 心比べにてぞ過ぎける。

【現代語訳】
相手から積極的に寄ってきたならば、そのようなことにして、うやむやのうちに事をはこぼう」とお思いになるが、女のほうは、かえって高貴な身分の人以上に、非常に気位高くかまえていて、憎たらしく思うような態度をとるので、意地の張り合いで日々が過ぎて行った。

『源氏物語』「明石」の巻より引用

源氏物語 初心者
光源氏もある程度プライドが高いし、明石の君もプライド高いから、意地の張り合いになっちゃったんだね。


結局のところ、光源氏が根負けして、
明石の君の寝所に無理に押し入って関係を持ち
愛人関係となります。

★エピソード3★

光源氏と結ばれて、姫君を出産した後、
明石の君は、源氏から
京に引っ越すように言われます。

しかし、明石の君は、
思慮深く誇り高い性格ゆえに
なかなか決心がつきません。

【源氏物語 原文】 
こよなくやむごとなき際の人びとだに、なかなかさてかけ離れぬ御ありさまのつれなきを見つつ、もの思ひまさりぬべく聞くを、まして、 何ばかりのおぼえなりとてか、さし出でまじらはむ。

【現代語訳】
この上なく高貴な身分の女性でさえ、すっかり見放されるわけでもない様子の冷淡さを見ながら、物思いを募らせていると聞くのに、まして、世間から重んじられていない私が、その中へ入って行けようか。

『源氏物語』「松風」の巻より引用

身分の低い自分が、
京に移って光源氏から屈辱的な扱いを受ける
リスクを考えると、簡単には承諾できないのでした。

筆者
実際に、末摘花や花散里は、妾として関係を結びながら、光源氏から女性として愛されていなかったのです。


源氏物語 初心者
なるほど~。明石の君は、そういう噂を聞いて、「私は同じようになりたくない」と思っていたんだね。

明石の君はそのご上京し、大堰の山荘に移り住む。
琴をひく明石の君(右)と母尼君(左)
「源氏物語画帖 松風」土佐光起筆 江戸時代
明石の君はそのご上京し、大堰の山荘に移り住む。
琴をひく明石の君(右)と母尼君(左)
「源氏物語画帖 松風」土佐光起筆 江戸時代

謙虚である

明石の君は、プライドが高い一方で
決して出しゃばった態度をとらず、
非常に謙虚です。


光源氏から言い寄られている時、
明石の君はいい気になって
思いあがったりはしませんでした。

自分の身分をわきまえ、
謙虚な気持ちを持っていたのです。

【源氏物語 原文】
かくまで世にあるものと思し尋ぬるなどこそ、かかる海人のなかに朽ちぬる身にあまることなれ

【現代語訳】
このようにまで私に興味をいただくのは、このような海人の中に混じって朽ち果てた我が身にとっては、過分の幸せだわ

『源氏物語』「明石」の巻より引用

源氏物語 初心者
高貴なイケメンから言い寄られたら、舞い上がってしまいそうだけど、明石の君はすごく冷静だね!


娘・明石の姫君が東宮の皇子を
出産したときも、
養母・紫の上が本当の祖母のように
赤子を抱いていました。

明石の君は実母であるのに
まるでただの女房のように
産湯の支度などを行っていたのです。

筆者
明石の君は決して出過ぎたことはせず、かといって自分を卑下しすぎないところが、光源氏に気に入られていたんですよ。


明石の君が実母の権利を主張しないので
養母・紫の上とも良好な関係を築けたのです。

プライドの高さと謙虚さとは
一見矛盾しているように見えますが
この2つの性格をうまく共存させているところが
明石の君の大きな特徴なのです。


野心が強い

明石の君は、自分の娘を入内させて、
明石一族を繁栄させたい
という野心の強い女性でした。


望み通り娘が入内し、
東宮の子を懐妊した際には、
男皇子かどうかをとても心配していました。

【源氏物語 原文】 
母君、この時にわが御宿世も見ゆべきわざなめれば、いみじき心を尽くしたまふ。

【現代語訳】
母君(明石の君)は、この時(娘の出産)に自分の御運もはっきりするだろうことなので、非常に気を揉んでいらっしゃる。

『源氏物語』「若菜上」の巻より引用

結果として、思い通りに男子が生まれ、
明石の君は、国母の母となり
明石一族は幸福を得るのです。

教養が高い

明石の君は両親から
手厚い教育を受けており、
教養も申し分ないレベルに達していました。

【源氏物語 原文】  
手のさま、書きたるさまなど、やむごとなき人にいたう劣るまじう、上衆めきたり。

【現代語訳】
筆跡や、書いてある文字の配置など、高貴な方と比べても見劣りがせず、貴婦人といった雰囲気である。

『源氏物語』「明石」の巻より引用

筆者
筆跡が優れているというのは、平安時代の貴族女性にとって重要な要素だったのです。


また、明石の君は琵琶の名手であるとも
語られています。

父の入道が琵琶が得意だったのを
見よう見まねで習得してしまった天才肌です。

明石の入道は琵琶の名手。
光源氏は琴(きん)の琴を演奏している。
「源氏物語画帖 明石」土佐光吉筆 桃山時代
明石の入道は琵琶の名手。
光源氏は琴(きん)の琴を演奏している。
「源氏物語画帖 明石」土佐光吉筆 桃山時代

「若菜下」の六条院の女楽の際には、
「 神さびたる手づかひ」(神々しい弾き方」
とまで形容されています。

源氏物語 初心者
明石の君は、人柄も教養も完璧だね。じゃあ、顔はどうだったの?美人だった?

明石の君の見た目は美人だった?

明石の君の容姿は、
とりわけて美人というわけではありませんでした。

【源氏物語 原文】  
この娘、すぐれたる容貌ならねど、なつかしうあてはかに、心ばせあるさまなどぞ、 げに、やむごとなき人に劣るまじかりける。

【現代語訳】
この娘は、優れた容貌ではないが、優しく品があり、聡明なところなどは、なるほど、高貴な人に劣らないようであった。

『源氏物語』「須磨」の巻より引用

すごく美人というわけではないけれど、
やわらかく上品な雰囲気が魅力的な女性だったのです。

源氏物語図色紙「初音」明石の君と光源氏
源氏物語図色紙「初音」土佐派筆 江戸時代
明石の君と光源氏

明石の君の容姿について、
もう少し詳しく見ていきましょう!

六条御息所に雰囲気が似ている

明石の君は、雰囲気が
六条御息所に似ていると書かれています。

【源氏物語 原文】  

ほのかなるけはひ、伊勢の御息所にいとようおぼえたり。

【現代語訳】
かすかにしゃべる感じは、伊勢の御息所(六条御息所)にとてもよく似ていた。

『源氏物語』「明石」の巻より引用
源氏物語画帖の六条御息所

六条御息所も明石の君も
プライドの高い女性だったので、
雰囲気が似ていたのですね。

源氏物語 初心者
そういえば、漫画「あさきゆめみし」でも、六条御息所と明石の君の顔は似ているよ。

原文には、2人の顔が似ていると
書かれているわけではないことに注意してください。

上記のシーンでは暗闇だったので、
光源氏は明石の君の顔をまだ見ていません。

暗闇の中で想像される雰囲気が似ていたと
言っているのです。

体格がすらりとして背が高い

明石の君は、すらりとして高身長の女性でした。

【源氏物語 原文】 
人ざま、いとあてに、そびえて、心恥づかしきけはひぞしたる。

【現代語訳】
(明石の君の)人柄は、とても品があり、すらりとして背が高く、気後れするような感じがする。

『源氏物語』「明石」の巻より引用

古語の「そびゆ」には
「背が高い」「すらっとしている」
という意味があります。

風情があり、気高い容姿

光源氏は、明石から都に帰る日の2日前に、
初めて明石の君の顔をはっきり見ています。

【源氏物語 原文】
「 いとよしよししう、気高きさまして、めざましうもありけるかな」

【現代語訳】
とても風情があり、気高い容貌をしていて、素晴らしいな」

『源氏物語』「明石」の巻より引用

と光源氏は感想を述べています。

明石の君は
華やかな美しさはなかったようですが、
上品で、好感の持てる容貌でした。


優美で品があり、やわらかい雰囲気で、
まるで内親王のようなオーラを醸し出していたのです。

筆者
「若菜下」では「心の底を覗いてみたい様子」と語られており、深みや情緒のある静かな美が想像されます。


源氏物語 初心者
何を考えているか分かりづらい、ミステリアスな感じだったのかな!?


明石の君の身分

源氏物語 初心者
明石の君はすごく気高い雰囲気の人だったんだね。身分は高かったの?


明石の君は、あまり身分の高い女性では
ありませんでした。
中流貴族といったところです。


父の明石の入道は
過去には地方の受領(長官)を
務めていましたが
辞職して出家し、僧になっていました。

明石の入道は須磨にいた光源氏を招き、娘・明石の君の話を持ち出す。
「源氏物語画帖 明石」土佐光則筆 江戸時代
明石の入道は須磨にいた光源氏を招き、娘・明石の君の話を持ち出す。
「源氏物語画帖 明石」土佐光則筆 江戸時代

「帚木」の巻の本文に
「受領の中にも中の品(中流貴族)と
言える者がいる」という記述があります。

明石の尼君の祖父は中務宮。
つまり明石の君は皇族の血をひく女性
でもありました。

総合的に判断して
明石の君は中流貴族だったと言えるでしょう。

筆者
光源氏は「薄雲」の巻で、明石の君は父親が受領なのが問題というより、父親が偏屈な性格ゆえに世間の評判が悪いことの方が問題だとも言っています。

明石の君の年齢

源氏物語 初心者
明石の君って何歳だったの?


明石の君は、「明石」巻の時点で
18歳だったと語られています。

根拠となる原文はこちら、
明石の入道が、光源氏に語った言葉です。

【源氏物語 原文】
住吉の神を頼みはじめたてまつりて、この十八年になりはべりぬ。

【現代語訳】
住吉の神をご祈願申し始めて、十八年になりました。

『源氏物語』「明石」の巻より引用

明石の入道は、明石の君が生まれる直前に
「明石一族から皇后と帝が出る」
という意味の不思議な夢のお告げを得ています。

筆者
明石の入道は夢のお告げをきっかけに、住吉の神にお祈りを始めたのでしょう。


明石の君が生まれてから18年間
住吉の神を祈願していると理解すると
「明石」の巻で、明石の君は18歳ということになります。

明石の君は18歳のときに
27歳の光源氏に出会いました。
年の差は9歳です。

姫君を出産したのは
明石の君が20歳の頃です。

源氏物語の中で、
明石の君は50歳くらいまで登場しています。

ただ、「若紫」の巻と矛盾があります。

「明石」の巻で18歳であれば、逆算すると
「若紫」の巻の時点で明石の君は
9歳だったことになります。


「若紫」の巻には明石の君の噂話が登場し、
「代々の国司が求婚するが、承知しない」
という記載があるのです。

筆者
9歳の女の子に求婚話というのは、さすがに無理がありますよね。


このあたりは、
紫式部の設定ミスといったところでしょうか。
六条御息所に関しても、
年齢の設定ミスが指摘されています。

明石の君と光源氏の出会いと別れ

源氏物語 初心者
明石の君と光源氏は、どんなふうに出会って、どんなふうに別れたの?

明石の君と光源氏の出会い

明石の君と光源氏が初めて逢ったのは、
秋8月13日の月が明るく出た夜のことです。

父・明石の入道が吉日を調べ、
良い日を見計らって光源氏を呼び寄せました。

明石の君を訪ねる光源氏。「紫式部・須磨・明石図」土佐光成筆 江戸時代
明石の君を訪ねる光源氏。「紫式部・須磨・明石図」土佐光成筆 江戸時代

筆者
父の入道は、娘が光源氏と結婚するのを望んでいたから、逢瀬の場をセッティングしたのです。


明石の君の家は美しく整えられ、
月の光に照らされた戸口が少しだけ
開けてありました。

源氏物語 初心者
家にあがってくれ、と言わんばかりに誘っているね。


光源氏は縁側にあがって
明石の君に声をかけますが、
誇り高い女性なので簡単には心を開きません。
別の部屋にこもって戸締りまでしてしまいました。

光源氏は相手の態度にしびれを切らして、
部屋に無理やり押し入って男女の契りを
結んでしまうのです。


源氏物語 初心者
光源氏が強引なのは、いつものことだね。


「源氏物語」原文には、
2人の契りのシーンは非常にぼかして表現されています。

【源氏物語 原文】 
されど、さのみもいかでかあらむ。

【現代語訳】
けれども、そうしてばかりいられようか。

『源氏物語』「明石」の巻より引用

これだけです。

光源氏は、
戸締りした部屋の前に座って
女と会話しているだけでは気が済まない!

という意味ですね。

その後は、明石の君の容貌や
光源氏の感情が語られていきます。

やがて明石の君は姫君を出産する。
光源氏、娘との初めての対面シーン「源氏物語画帖 松風」土佐光則著 江戸時代
やがて明石の君は姫君を出産する。
光源氏、娘との初めての対面シーン「源氏物語画帖 松風」土佐光則著 江戸時代

明石の君と光源氏の別れ

光源氏のほうが、明石の君よりも
先に亡くなってしまいますが、
2人の別れのシーンは
「源氏物語」原文に書かれていません。


ただ、2人が原文中で
最後に会話を交わしたのは、
「幻」の巻です。

最愛の妻・紫の上を亡くした光源氏は
魂が抜けたようになってしまって
追悼の日々を送っていました。

その日々の中で、ある日、明石の君の
部屋を訪ねて、2人で昔を懐かしんだのです。

筆者
この夜、光源氏はもう昔のように明石の君と寝所を共にすることはありませんでした。


しんみりを話しをした後には
光源氏は明石の君の部屋を後にして
一人、仏の前で勤行をおこない紫の上を追悼していたのです。

最愛の妻・紫の上の死により
光源氏は深い絶望を感じ、
やがて出家して
自らも最期を迎えます。

明石の君との別れのシーンは
原文中には登場しません。

明石の君の生涯年表

明石の君の人生を年表にまとめました。
簡単なあらすじとして参考にしてください。

スクロールできます
登場巻出来事明石の君の年齢光源氏の年齢
若紫光源氏、北山で明石の入道の噂を聞く。
入道夫婦に大切に育てられている娘(明石の君)に興味を示す。
9歳18歳
須磨明石の入道、光源氏が須磨にいると知り、
娘(明石の君)と結婚させたいと思う。
17歳26歳
明石明石の入道、迎えの舟を出す。
光源氏、明石に移る。
光源氏、明石の君に興味を持つ。
光源氏、明石の君と文を遣り取りするが
お互いプライドが高く、なかなか結ばれず。
光源氏、強引に明石の君と契る。
光源氏、明石の君のもとに通う。
紫の上を想い、源氏の訪問が一時途絶え
明石の君、絶望する。
明石の君、懐妊するが、
光源氏の帰京が決まり、悲嘆する。
帰京の2日前2人はお互いの顔を初めて見る。
明石の君、光源氏の前で琴を弾く。
光源氏が帰京し、明石の一族は嘆き悲しむ。
18歳~19歳27歳~28歳
澪標明石の君、3月16日に姫君を出産。
光源氏、乳母として宣旨の娘を選定。
光源氏、姫君の五十日の祝いを贈る。
光源氏と明石の君、住吉詣で鉢合わせる。
明石の君、威光に圧倒されて退散する。
光源氏、明石の君を京に迎えたいと
意向を示すが、明石の君は決心できない。
20歳29歳
松風二条東院が完成し、
光源氏は明石の君を京に呼ぶが
明石の入道、京の大堰の山荘を改修させ
妻の尼君と明石の君を移させる。
光源氏、大堰で明石の君と再会。
姫君と初めて対面。
22歳31歳
薄雲明石の君、姫君を紫の上の養女にする。
紫の上、明石の姫君を可愛がる。
光源氏、大堰を再訪する。
22歳~23歳31歳~32歳
朝顔光源氏、紫の上に明石の君のことを語る。23歳32歳
乙女六条院が完成。
明石の君、他の妻が引っ越した後に
ひっそりと大堰から六条院の冬の御殿に引っ越す。
26歳35歳
玉鬘六条院歳末の衣配りで、
明石の君に品のある衣が割り当てられる。
紫の上、嫉妬する。
26歳35歳
初音新春、
明石の君、明石の姫君と和歌の贈答をする。
光源氏、冬の御殿に宿泊する。
紫の上、嫉妬する。
27歳36歳
5月の雨期、
明石の君、小説を書写した草紙を明石の姫君に贈る。
27歳36歳
野分台風の翌朝、
光源氏、明石の君を見舞う。
27歳36歳
梅枝明石の姫君11歳、裳着の儀式。
裳着の祝いの薫物合わせにて、
明石の君、香りを調合する。
30歳39歳
藤裏葉明石の姫君、東宮に入内。
女御となる。
明石の君、入内に付きそう。
明石の君と紫の上、初めて対面する。
30歳39歳
若菜上明石の君、
女三の宮の降嫁で落ち込む紫の上に、
同情の文を贈る。
明石の女御懐妊し、内裏を退出。
明石の君、付き添って六条院に入る。
紫の上、明石の女御と明石の君に対面。
明石の君、紫の上が開催する
薬師仏供養の精進落としの準備を手伝う。
明石の尼君、孫の明石の女御に
昔のことを語る。
明石の君、明石の尼君、明石の女御、
過去を懐かしみ和歌を詠みあう。
明石の女御、男皇子を出産。
明石の入道、念願叶い、山奥へ修行の旅に出る。
明石の君、入道の手紙を読み、悲嘆する。
31歳~32歳40歳~41歳
若菜下明石の君、紫の上や明石の女御とともに
住吉参詣に出かける。
明石の一族の幸福が描かれる。
六条院の女楽で琵琶を演奏する。
37歳~38歳46歳~47歳
御法明石の君、紫の上が開催する二条院法華経供養に参席。
明石の君、紫の上と和歌を遣り取りする。
明石の君、明石の中宮、病床の紫の上と会話を交わす。
紫の上死去。
42歳51歳
光源氏、明石の君に紫の上を亡くした悲しみを語る。43歳52歳
匂兵部卿光源氏の死後
明石の君、大勢の孫の世話をしながら過ごす。
52歳没後
明石の君 生涯年表

明石の君は「源氏物語」の主要な登場人物の
一人として、「須磨」巻以降、頻繁に登場します。

源氏物語 初心者
明石の君は、いつ頃亡くなったの?


明石の君の死は原文に書かれていない

明石の君の死については、
物語中に記載がありません。


最後に明石の君の名が見られるのは
「源氏物語」第3部「匂兵部卿」巻の冒頭です。

明石の君は、光源氏の没後は
娘が産んだ大勢の孫の世話をしながら
幸せな晩年を送っていました。

「源氏物語」のストーリーは薫や匂宮、
宇治の三姉妹を中心に変わってしまいます。

「匂兵部卿」巻の冒頭を最後に
明石の君は登場しなくなってしまいます。

明石の君と紫の上の不思議な関係性

源氏物語 初心者
明石の君と紫の上って、結局どんな関係性だったの?


明石の君と紫の上は、両方とも
光源氏の妻でした。

筆者
2人は友人のような、ライバルのような、主従関係のような…不思議な関係性を築いています。

紫の上の明石の君に対する感情は、
嫉妬⇒同情⇒友情と変わっていきます。
それぞれの感情は混ざり合うケースもあり
紫の上はとても複雑な気持ちを抱いていました。

紫の上の手紙を読む明石の君。
病に伏した紫の上のは明石の君に文を送った。
「源氏物語手鑑 御法」土佐光吉著 桃山時代

明石の君は紫の上に対して
嫉妬心は抱いていないように見えます。
羨望と尊敬の気持ちに友情が芽生えたような感じです。

紫の上⇒明石の君 強い嫉妬心

明石の君と光源氏が愛人関係となった頃、
すでに紫の上は光源氏の妻として愛されていたため
明石の君に強い嫉妬心を感じていました。

さらに子どもまで生まれたのだから、
紫の上は気が気ではありません。

筆者
紫の上と光源氏の間には子が生まれませんでした。明石の君は、紫の上が持っていないものを持ってしまったのです。

紫の上⇒明石の君 同情

明石の君は、光源氏との間に生まれた姫君を、
なんと紫の上の養女にします。

源氏物語 初心者
なんで、自分の娘を、他の妻の養女にしたの?

明石の君は身分が高くない上に、
父入道は偏屈な性格で
世間からの評判が良くありませんでした。

このまま姫君が自分の子として育つと
将来、世間から丁重な扱いを
受けられないと案じたからです。

筆者
姫君を紫の上の子とすることで、重々しく扱われ、良い縁談に恵まれると判断したのです。


紫の上は、子ども好きな性格だったので、
姫君の養母となることをすんなりと承諾します。

光源氏と紫の上の間にあるのは明石の君の手紙。
光源氏は、明石の姫君を紫の上の養女にしたいと思案する。
「源氏物語図色紙」土佐派筆 江戸時代
光源氏と紫の上の間にあるのは明石の君の手紙。
光源氏は、明石の姫君を紫の上の養女にしたいと思案する。
「源氏物語図色紙」土佐派筆 江戸時代



そして、引き取った姫君を可愛がるにつれて
明石の君への嫉妬心も軽減してしまうのでした。

紫の上は立派な人柄の女性だったので、
我が子を手放した明石の君の悲痛な気持ちを
想像して同情したのです。

【源氏物語 原文】
「 いかに思ひおこすらむ。われにて、いみじう恋しかりぬべきさまを」

【現代語訳】
「(明石の君は)どう思っているだろう。自分だって、とても恋しく思わずにはいられないなのに」

『源氏物語』「薄雲」の巻より引用

養母の自分さえ、子どもが可愛いのだから、
実母の明石の君の気持ちはどんなに苦しいだろうと
同情したのですね。

紫の上と明石の君の対面&美しい友情

それ以降も、
紫の上の明石の君に対する
嫉妬心は完全にはなくなったわけではなく
折にふれて嫉妬心を見せています。

ところが、明石の姫君が11歳になり
東宮に入内することになると、
紫の上は明石の君に入内の付き添いを
するように提案します。


筆者
引き離された母子の心情を思い、同情したのです。


源氏物語 初心者
紫の上は、優しい人だね。


紫の上と明石の君は、
明石の姫君が居住する桐壺にて
ついに対面します。

紫の上とは初対面。
娘とは約8年ぶりの再会でした。

紫の上と明石の君、2人とも長年、
複雑な感情があったにもかかわらず
互いに素晴らしい女性だと認め、
不思議な友情関係が芽生えます。


明石の君は聡明で
自分の感情を見せないタイプ。

紫の上は穏やかで
誰とでも友達になろうとするタイプ。

明石の君は紫の上に
うまく調子を合わせられる
器用な人柄だったのでしょう。

【源氏物語 原文】
御仲らひあらまほしううちとけゆくに、さりとてさし過ぎもの馴れず、あなづらはしかるべきもてなし、はた、つゆなく、あやしくあらまほしき人のありさま、心ばへなり。

【現代語訳】
二人の関係は理想的に仲良くなっていくが、かといって出過ぎたり馴れ馴れしくはせず、軽く見られるような態度は全くなく、不思議なほど理想的な態度、心の持ち方である。

『源氏物語』「藤裏葉」の巻より引用

源氏物語 初心者
明石の君って世渡り上手なタイプだったんだね。


筆者
明石の君は気が利いていて気品があるのに、しかるべき時に謙遜して、
わがもの顔に振る舞ったりはしませんでした。紫の上は非常に好感を持ったんだよ。


明石の姫君が皇子を出産してからは、
子どものお世話を通じて二人の友情は
ますます深まっていきました。


明石の君と光源氏の子供 明石の姫君は国母に

明石の君と光源氏の子ども 
明石の姫君は、東宮妃となりました。

東宮は「若菜下」の巻にて
天皇に即位し、明石の姫君は「御法」の巻の時点で
中宮の位を得ています。

長子の男皇子は次の東宮となり、
明石の姫君は国母になる将来を約束されるのでした。

源氏物語 初心者
国母ってなに?

筆者
国母は、天皇を産んだ母親のことだよ。


東宮の祖父となることで
光源氏の外戚政治は成功し、
光源氏一族は強大な権力を得ます。

東宮の祖母である明石の君、
曾祖母である明石の尼君も重々しい
扱いを受け、幸福を極めたのです。

ただし、「源氏物語」中では
明石の姫君の子は東宮のままで、
即位することなく「源氏物語」は終わっています。

明石の君の魅力とは何か

源氏物語 初心者
明石の君はすごく美人というわけでもないし、高貴な身分でもないのに、なぜ光源氏に愛されたの?


明石の君の魅力はどこにあるのか?
考察してみました。

プライドの高さ

明石の君の一つ目の魅力は、
プライドが高くて
上流貴族のように気品があるところ
です。

光源氏は、手に入りづらい女性を
追いかける傾向が強い男性です。

明石の君が気位が高く
簡単に愛人になりたがらない様子に
光源氏は、強い興味をそそられたのです。

藤壺の宮、空蝉、朝顔の君なども同様に、
思慮深く奥ゆかしい女性で、
光源氏は強い執着心を見せていました。

【源氏物語 原文】 
いとまほには乱れたまはねど、また、いとけざやかにはしたなく、おしなべてのさまにはもてなしたまはぬなどこそは、いと おぼえことには見ゆめれ。

【現代語訳】
一途にのめり込みなさらないが、一方で、はっきりと中途半端な普通の愛人としてお扱いなさらないところは、愛情も非常に深いようである。

『源氏物語』「薄雲」の巻より引用

筆者
光源氏は、明石の君に対して狂おしいほどの愛を持っていたわけではないけれど、特別な相手として愛人関係を継続していたのです。


明石の君は決して軽々しい態度をとらず、
常に思慮深い態度を通しています。

光源氏
基本的に俺は奥ゆかしい女が好き。明石の君のように気品のある女は、一度愛人関係を持ったならば生涯、大切にするよ。

謙虚さ

明石の君の2つめの魅力は、
謙虚さです。

プライドの高い性格でありながら、
自分を卑下することを忘れない性格は、
光源氏のみならず紫の上にも好感を与えました。

光源氏
プライドの高い女性は好きだけれど、
プライドの高すぎる女性は苦手だよ。


光源氏には明石の君の謙虚さは
可愛らしく感じられたことでしょう。

ミステリアスな二面性

明石の君は、
プライドの高い一面があるのに、
表面的には従順で謙虚な人でした。

筆者
人柄に二面性を持っていたのです。


明石の君は、心の底が見えず、
深みを感じると光源氏は絶賛しています。

【源氏物語 原文】 
あなづりそめて、心やすきものに思ひしを、なほ心の底見えず、際なく深きところある人になむ。うはべは人になびき、おいらかに見えながら、うちとけぬけしき下に籠もりて、そこはかとなく恥づかしきところこそあれ」

【現代語訳】
身分の低い人だと軽く見て、気楽な女だと思っていたが、やはり心の底が見えず、どこまでも深いところのある人でした。表面は従順で、おっとりして見えながら、しっかりしたところが下にあって、どことなく気が引けるところがある人です

『源氏物語』「若菜下」の巻より引用

本当のところは何を考えているのか
わからない明石の君のミステリアスな魅力が
光源氏を魅了したのでしょう。

源氏物語 初心者
プライドの高さと謙虚さ…明石の君は、相反する性格がうまく融合した人柄で光源氏を魅了したんだね。


光源氏
明石の君は心の底が見えなくて、不思議な女だったなあ。


明石の君 まとめ

この記事では、明石の君について
詳しく解説しました。

明石の君が魅力的な性格により
光源氏の心をつかみ、妻として
紫の上に次いで光源氏から愛されたことが
おわかりいただけたでしょう。

明石にいる短い期間で、
光源氏の子を妊娠したという運の強さも
着目すべきですね。

明石の君は、聡明すぎて、
少し計算高いイメージもあるため
好き嫌いの別れるキャラクターですが、
「源氏物語」の中で重要な役割を果たす女君です。

ぜひ現代語訳で明石の君の人柄や
ストーリーを確認してみてくださいね。

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