源氏物語が気持ち悪い。
光源氏の言動にイライラする。
良さがわからない。
この記事では、
源氏物語が嫌われる理由を考察しています。
さらに、
源氏物語が気持ち悪いと感じる人に向けて
源氏物語の面白さと、なぜ名作と言われているかを
解説しています。
源氏物語はが気持ち悪い、イライラすると感じる理由
源氏物語を読んで、
「気持ち悪い」「イライラする」と
感じる人は多いです。
では、源氏物語のどのようなポイントが
嫌われているのでしょうか?
考察してみました。
光源氏がクズすぎるから(マザコン&ロリコン)
一言でいえばこれに尽きるでしょう。
光源氏がクズすぎるのです。
具体的にどのようにクズなのかは、
こちらの記事で詳しく解説しました。
7つのクズエピソードを紹介しています。
最も印象的なクズポイントは、
マザコン&ロリコンだというところです。
光源氏はマザコン
光源氏は、超マザコンです。
実母に似ている継母・藤壺を理想の女性として、
あれでもない、これでもないと
継母に似ている女性を追い求める人生でした。
光源氏はロリコン
光源氏の恋愛遍歴の中でも
もっとも有名かつ、
もっとも嫌悪されているのが
幼い若紫を自邸に連れ去って、
自分好みの女性に育てて妻とするロリコン・エピソードでしょう。
現代人の感覚で、
光源氏を「気持ち悪い」と思うのは当然です。
光源氏が恋愛ばかりしているから
源氏物語の大部分は、恋愛のお話です。
光源氏は桐壺帝の皇子であり、
臣籍降下した後は臣下として宮中で仕えていました。
中将⇒大将⇒大納言⇒内大臣⇒
太政大臣⇒准太上天皇
と、どんどん昇進して
エラくなっていくのですが
光源氏が仕事をしているエピソードなぞ
ほとんどなく、
源氏物語のほとんどは恋愛と風流のお話です。
光源氏はまともに働きません。
オスの本能に心を支配され、
昼間から女のことを
考えているわけですから、
読者は気持ち悪いでし、イライラします。
しかもドロドロした昼ドラみたいな
展開もあるので、苦手な人は多いのです。
光源氏はほとんど仕事してないのに、
なぜか准太上天皇という最高の地位まで
昇りつめるのですからムカつきますよね。
さらに源氏物語の第三部では、
光源氏の子(実際は女三の宮と柏木の子)
である薫と、孫の匂宮もまた恋愛に現を抜かしています。
匂宮もこれまた女にだらしないので、
読者は最後までイライラさせられるのです。
一夫多妻制で浮気ばかりしているから
源氏物語は、
平安時代に書かれたお話なので、
一夫多妻制の世界が描かれています。
光源氏は、
最終的には紫の上を最愛の妻としますが、
あくまで側室であり、
それ以外に何人も妻がいたのです。
葵の上(一番目の正妻)
女三の宮(二番目の正妻)
紫の上
花散里
明石の君
末摘花
紫の上の気持ちを無視して、
浮気を繰り返す光源氏に、読者はイライラします。
平安時代の女性は社会的・経済的に
弱い立場に置かれており、基本的には
夫の言うことに従うしかなかったのです。
現代では、一夫一妻制ですし、
女性の社会的地位も向上しました。
「不倫・浮気は大きな罪」という価値観も
根付いています。
現代人にとって源氏物語のような
「浮気&一夫多妻制」
の物語は受け入れづらいものなのです。
源氏物語の良さがわからない…
光源氏がクズすぎて嫌い。
源氏物語に出てくる男たちは
みな自分勝手でイライラする。
女君たちが気の毒すぎる。
話の内容も難しいし、
源氏物語の良さが
まったくわからない!!
でも、源氏物語は
古典文学の最高峰などと
言われているし、教科書にも載るくらい有名。
源氏物語の良さがわからない自分がおかしいの?
源氏物語(現代語訳)を読んでる。今のところぜんぜん趣味に合わなくて気持ち悪い‥🤮
— そふぃ (@nore_co) January 6, 2024
知らない言葉を調べながら読んでるんだけど、日本(平安時代)の階級社会・血縁社会ぶりが感じられて、生き辛そうで日本っておそろしい🥶と思ってしまう。。
ところで
末摘花って外国人だろう、と思った。。。
うぇ源氏物語気持ち悪い無理🤮
— ゆき (@revaleykmmd) November 15, 2023
万葉集も古事記も諸々面白いよ
— きなこ (@Rock_no_teigi) April 1, 2019
漢詩も和歌も昔読み漁ったけど源氏物語だけはイライラした(笑)あれは今でも嫌い
古典文学は好きだけれど、
源氏物語だけは嫌い!という人もいます。
人それぞれ趣味が違います。
現代小説にだって好き嫌いがあるように、
古典文学に好き嫌いがあるのは当然ですよね。
でも、
どうして源氏物語はすごい、名作だと言われているのでしょうか?
源氏物語はなぜ名作なのか
源氏物語がなぜ名作といわれているかは、
こちらの記事で詳しく解説しています。
源氏物語が名作といわれるポイントは
大きく分けて3つです。
- 克明な心理描写
- 長編小説でありストーリー展開が秀逸
- 平安時代の文化が散りばめられている
源氏物語はフィクション小説(作り物語)です。
しかし、古代文学にありがちな
荒唐無稽さはなく、
現実的な内容の恋愛小説であるところが
評価されています。
さらに、ただ単に
現実的な長編小説であるというだけでなく、
ストーリー展開が優れているし、
登場人物の心理描写も克明で
キャラクター設定も明確なので、
世界観が完璧に仕上がっているのです。
そんな優れた小説が
西暦1000年前後に書かれているから、
平安時代独特の文化や言語が反映されており、
資料としての価値も高いというわけです。
源氏物語の面白いところは何?
個性豊かな女君を楽しむ
源氏物語は、
光源氏やその子孫の恋愛を
中心とした物語なので、
恋のお相手としてたくさんの女君が登場します。
女君はすべて容姿や性格などの
キャラクター設定がしっかりとされています。
完璧な貴女・藤壺の宮
美しく優しい紫の上
素直になれない葵の上
純真だが不美人な末摘花…
源氏物語を読んでいると、
「私はこの女君が好きだな」
「私はこの女君に似ている」
「この女君みたいな性格になりたい」など
色んな感情が湧いてきます。
こちらの記事では、
源氏物語の登場人物を紹介しています。
ぜひ読んでいってくださいね✨
ストーリーが面白い(因果応報)
源氏物語は、ただの光源氏の
サクセスストーリーに終わりません。
光源氏が不幸に襲われて枯れていく姿も
描かれています。
社会的地位も金も女も
全てを手に入れた光源氏は、
まだ満足できず、
朱雀院の皇女・女三の宮を正妻にします。
\女三の宮の解説記事/
ところが、
その女三の宮に不倫され、裏切られます。
光源氏は、若い頃に
継母の藤壺と密通の罪を犯しました。
自らの犯した罪の因果応報として、
今度は自分の正妻が密通の罪を犯したのです。
その後、最愛の妻・紫の上は病死。
光源氏は深く悲しみ出家して、その生涯を終えます…。
光源氏が栄華を手に入れるところで
源氏物語が終わっていたら、予定調和で
ひどく味気ない物語になっていたでしょう。
源氏物語は、光源氏の手に入れた
幸福が失われていく過程を描くことで
より深みが出て、読者を惹きこんでいくのです。
平安時代の古典文学として楽しむ
「光源氏は女の敵ってイメージなのに、
どうして源氏物語なんかが好きなの?」
と質問されたことがあります。
私は、「源氏物語」をあくまで
平安時代に書かれた
古典文学として楽しんでいます。
源氏物語は平安時代に書かれた
フィクションなので、私の中で、
光源氏という人物はリアリティがなく、
ファンタジー小説を読むような
感覚でとらえているのです。
だから、光源氏の言動の
「気持ち悪さ」も真剣に考えていないので
ニヤニヤ笑いながら
「クズだなあ」と楽しむことができるのです。
風流な和歌や襲(かさね)の色目など
現代小説にはない雅さも平安文学の独自性として
楽しむことができますね。
源氏物語が伝えたいことは何?
源氏物語は、光源氏やその子孫が
日々を優雅な恋愛にいそしむお話ですが、
いったい何を伝えたかったのでしょうか?
仏教的な無常観と因果応報
源氏物語の根底には、
仏教的な価値観が流れています。
- 無常観
- 因果応報
この2つの価値観を
紫式部は源氏物語を通して伝えています。
源氏物語第一部で恋愛を繰り返し、
継母・藤壺と密通の罪を犯した光源氏は、
外戚政治により栄華を極めます。
しかし、第二部で正妻の裏切り(不倫)と、
最愛の妻・紫の上の死に直面し、
静かにその生涯を終えるのです。
どんなに富み栄えていても
全てのものは移り変わり、
永遠などは無いという無常観。
若い頃に犯した密通の罪は、
必ず自らの身に返ってくるという
因果応報をあらわしています。
当時の貴族女性の生きづらさ
平安時代の貴族女性は、
基本的には自分の意志通りには
生きられませんでした。
父親や夫など男性に庇護される必要があり、
後ろ盾を失った女性は
困窮していくしかなかったのです。
源氏物語は、
平安時代の貴族女性の生きづらさを
伝えようとしています。
それは、浮舟の物語によく表れています。
源氏物語の宇治十帖では、
光源氏の子孫である薫と匂宮が
宇治の三姉妹を巡って恋愛を繰り広げます。
最終的に三女・浮舟は薫と匂宮の
恋の板挟みに苦しみ、川に身を投げます。
僧都に助けられた浮舟は出家して、
薫への手紙の返事を拒むところで
源氏物語は終わっているのです。
自分の意志では何も決められず、
母や周囲の男たちの
言いなりになるしかない浮舟は
男女の仲に深く悩みました。
そして、最後にすがったのは
仏道に入ることでした。
ラストシーンで尼となった浮舟は薫を拒絶します。
ところが、薫は浮舟に未練たらたらで
「誰か男にかくまわれているのでは?」
と邪推するのです。
この最後のシーンは、
仏道に入った浮舟と、
俗世間でまだ欲にまみれた薫との
対比がよく表現されています。
恋や愛や結婚話にうんざりして、
出家し、俗世間を抜け出した
浮舟の達観した様子こそが、
紫式部が最も描きたかった女性像なのではないでしょうか?
紫の上も晩年に次のように語っています。
【源氏物語 原文】
源氏物語「夕霧」の巻より引用
女ばかり、身をもてなすさまも所狭う、あはれなるべきものはなし。
【現代語訳】
女ほど、身の処し方も窮屈で、気の毒なものはない。
当時の貴族女性の生きづらさ、
人生の息苦しさが源氏物語を通して
表現されているのです。
この記事を通して、
「源氏物語」の魅力が少しでも伝わったら嬉しいです。
人それぞれ趣味は異なりますので、
無理して読む必要はありませんが、
まずは漫画「あさきゆめみし」から
源氏物語の世界を体験してみてください😊